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いずれ、米国が復帰する可能性は十分にある

 もちろん、トランプ政権にとってTPP離脱は選挙公約なので、今すぐ復帰するはずはない。ライトハイザー・米通商代表部(USTR)代表やロス商務長官もTPP離脱を前提とした二国間交渉をするのが仕事で、今その成果を挙げることが求められている立場の人たちだ。従って、その言葉だけで将来の在り方まで判断するのは早計だ。

 これまでの米国の歴史を振り返っても、米国はいずれ、TPP離脱という方針を修正してくるだろう。それは根拠なき期待ではない。米国から見て経済合理性があるからだ。模倣品対策の知財、銀行・小売りの参入、公共事業への参入など、産業界のビジネスチャンスを拡大するための交渉を、これから二国間で進めていくことになれば、莫大な時間とエネルギーが必要になる。米国商工会議所もそのことを理解して、TPP離脱には反対の立場だ。

 今、国務省、財務省などトランプ政権内の経済外交の戦略を支える政府高官たちが不在の状況だ。彼らがTPPの戦略的メリットを理解し、米国内の産業界から復帰の強い要望を受ける日もいずれやってくるのではないだろうか。

 しかし米国の復帰をじっと待っていても、その期待を実現できるわけではない。米国が復帰せざるを得ない状況を、能動的に作っていかない限り復帰はあり得ない。

 閣僚声明で「米国の復帰を促す方策を検討」することが盛り込まれた意味もそこにある。同時に、各国と連携して、官民それぞれ米国への働きかけを強めていくべきだろう。参加国からは米国の復帰に向けて日本に期待する声も上がっている。今後、日米関係においても日米経済対話での米国の風圧は高まるであろうが、日本のぶれないスタンスと覚悟が重要だ。

TPP11の本質は米国に対する“防波堤”ではない

 それに関連して、日本のメディアでは、「TPP11の意味は日米二国間での米国の対日要求をけん制する、いわば防波堤だ」とする論がある。確かにそういう効果もあるかもしれないし、国内のTPP11慎重派を説得するためにそう言われているようだ。しかし「防波堤だ」と明示的に言っても、当然相手の米国が警戒するだけで、その結果、防波堤にはならないものだ。

 むしろTPP11の本質的な意味は、目先の駆け引きではなく、米国に対して将来の選択肢を提示することにある。そこを見誤ってはいけない。

 これから11月までの半年が正念場だ。裏では他の参加国に対して中国による揺さぶりもあるだろう。日本もTPPに絡めて、参加国にさまざまな支援の手を差し伸べて、中国の揺さぶりに動じないよう説得する外交力も必要になってくる。