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米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)、いわゆる「TPP11」の閣僚会合が5月21日にベトナム・ハノイで開かれた。早期発効に向けた検討を11月までに終えることなどが確認されたが、発表された声明の取りまとめを主導したのは日本政府だ。声明から読み取れる日本政府の狙いを、元経産省米州課長の細川昌彦氏(中部大学特任教授)を解説する。 (「トランプウオッチ」でトランプ政権関連の情報を随時更新中)

5月21日にベトナム・ハワイで開催された、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11カ国による閣僚会合(代表撮影/ロイター/アフロ)

 先般、米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)の閣僚会議で、閣僚声明がまとめられた。内容を見ると、取りまとめはどうやら日本が豪州と協力して主導したようだ。

 前回3月に開催されたチリでの閣僚会合では、米国の離脱を受けて、TPPが方向性を見失って漂流しかねない危機的状況であった。日本も国内では「米国抜きTPP=TPP11」への慎重論もあって、スタンスを決めかねて様子見だった。

 ところが4月になって官邸主導で米国抜きTPPに決断してから、大きく潮目が変わった。豪州など積極派と連携を取りながら、失いかけたTPPの求心力回復に奔走した。もちろん参加国の意見には依然として隔たりがあるものの、今後の方向性を示す第一関門としては及第点だろう。

日本が主導した閣僚会合声明に隠された3つの狙い

 今回の声明には随所に日本主導の戦略が盛り込まれている。

 第一に、「早期発効」という目標を参加国間で共有して結束を維持したことだ。プライオリティーを「早期」というタイミングに置くことによって、今後の選択肢は自ずから絞られてくる。結果的に、協定の大幅見直しや、中国などを参加させての再交渉といったかく乱要因は封じることができる。

 今後のロードマップとして、「11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに検討作業を完了する」と、設定できたことも大きい。ポイントは来年秋の米国の中間選挙だ。それまでに受け皿を作って、米国にとっての選択肢に仕立てておくことが何としても必要となるからだ。それまでの間、参加国の閣僚がそろう機会もそう多くない。そういう意味でいいタイミング設定だろう。

 第二に、「将来はTPPの高い水準のルールを受け入れることを条件に、TPPを拡大する」ことを盛り込んだことも重要だ。中国が参加するならば、この条件をクリアすることが必要となるが、当面無理だろう。むしろタイ、インドネシアなど参加を希望している国々を取り込むことが大事だ。

 TPPの目的は、アジアの成長市場の活力を取り込むためにルールを整備することにある。タイ、インドネシアなどは市場規模も大きく、日本企業をはじめサプライチェーンが展開しており、参加していけば将来における経済的実利は大きい。米国企業にとっても同様で、米国復帰の誘因にもなる。

 第三に、「米国の復帰を促す方策を検討」することを確認したことも重要だ。米国市場へのアクセスと引き換えに国内規制の改革を譲歩した、というベトナムなどの参加国は米国抜きのTPPに慎重という。しかしながら、米国抜きのTPPといっても、それは単にプロセスに過ぎない。あくまでも目的は「米国が参加したTPP」である。

 ならばその可能性をどう見るか。