
「スマホの有機ELシフトは、当社にはポジティブ」。住友化学の野崎邦夫専務は5月16日の決算説明会でこう述べた。同社は液晶パネルの主要部材である偏光板で、日東電工と並んで世界大手。パネルの中を通る光を制御する偏光板は、液晶パネルでは2枚使うが、有機ELだと1枚に減る。

偏光板は住友化学の電子材料部門の収益をけん引してきた部材だ。使用量が半分になるアップルの戦略は痛手に見えるが、フィルム型の有機EL向けタッチセンサーは既に開発済み。18年1月に韓国拠点の生産能力を3倍に引き上げる計画だ。
2018年3月期には電子材料の売上高は、前期に比べて7%増の3850億円を見込む。そのうちタッチセンサーや反射防止フィルムなど有機EL関連が前期より2割程度増える。野崎専務は「2020年か21年には電子材料の売り上げの半分が有機ELになる」と見通す。
偏光板で住友化学と競う日東電工の高崎秀雄社長は「有機ELが(折り曲げられる)フレキシブルパネルになると、タッチパネル用フィルムや光学用の接着剤の使用が増える」と指摘。透明接着剤は同社の得意分野で「偏光板は1枚になるが、1台のスマホに搭載される当社の製品は液晶より金額ベースで20〜25%くらい増える」(高崎社長)と見込む。
「何が来てもいいように張っていた」と話すのは、東レの阿部晃一副社長だ。液晶向けのポリエステルフィルムなどを手掛けるが、有機ELで使う絶縁材料などへ経営資源をシフトさせている。17年3月期のディスプレー材料分野の売上高は前期比4%増の727億円だった。液晶向けの出荷は減るが、有機EL向けでカバーした。
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