民進党の岡田克也代表が安倍晋三首相との党首討論で消費増税の先送りを提案した。消費税論議で主導権を確保する狙いがあるが、サプライズ策は安倍首相側を利するリスクをはらむ。

民進党の岡田克也代表は、2017年4月に予定している消費税率10%への引き上げを2019年4月まで先送りするよう提案した (写真:Natsuki Sakai/アフロ)
民進党の岡田克也代表は、2017年4月に予定している消費税率10%への引き上げを2019年4月まで先送りするよう提案した (写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 注目された5月18日の党首討論。焦点である2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げを巡る論戦が交わされたが、最も話題をさらったのが、民進党の岡田克也代表の増税先送り提案だった。

「サプライズ提案」の背景

 「経済状況、特に消費は力強さを欠いている。もう一度、消費税率の引き上げを先送りせざるを得ない状況だ」

 岡田氏はこれまで消費増税に関し、態度を明確にしていなかった。同時に再延期の条件として、①2020年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の目標を堅持し、2019年4月に10%に引き上げ ②行財政改革の徹底 ③赤字国債を財源に社会保障政策を充実 ④軽減税率導入の白紙撤回――の4点を挙げた。

 岡田氏がこのタイミングで増税先送りという「サプライズ提案」に踏み込んだのには幾つかの思惑がある。まずは増税論議で主導権を確保しようという狙いだ。

 これまで民進党は「軽減税率の導入を前提とした消費増税には反対」との立場で、増税の是非そのものは曖昧にしてきた。旧民主党が与党時代に消費増税を軸とする社会保障と税の一体改革を取りまとめた経緯があり、党内で増税容認論が根強いためだ。

 ただ、民進党が増税の是非を不明確にしたまま参院選に突入すれば、安倍首相が先送りを決めた場合、対応が遅れかねない。

 先手を打つことで参院選で増税先送りを掲げることができるうえ、安倍首相が先送りを表明した場合に争点をつぶせるとの計算もある。

 既に増税反対を表明している共産党などほかの野党との共闘関係を強める狙いもある。参院選で1人区を中心に野党各党は安全保障関連法の廃止などを共通項に連携を深めている。増税先送りに踏み込むことで、協力関係に一段と弾みを付けようというわけだ。

 もう1つ、民進党幹部が「岡田さんの本当の狙い」として明かすのが、衆参同日選封じだ。参院選対応を優先する中、民進党の衆院選への準備は後手に回っている。

 民進党幹部は「先にこちらから延期を持ち出したことで、安倍首相は先送りを宣言して衆参ダブル選挙に打って出るのは難しくなったはずだ」と話す。

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