三菱自動車に続きスズキでも、走行抵抗値の測定で法規とは異なる方法を採用していたことが発覚した。「燃費を水増しするためではなかった」と三菱自動車との違いを強調する。鈴木修会長は「現場は安易に(不正に)走ってしまった。風通しのいい組織にしないといけない」と反省の弁を述べた。

「燃費表示に問題ないと確認はできたが、定められた方法を用いてはいなかった」。5月18日夕方から開かれたスズキの記者会見の冒頭、鈴木修会長はこう語り、頭を下げた。三菱自動車の燃費不正問題を受けてほかの国内メーカーも違法な測定方法をしていないか内部調査を求められていた。この日が国土交通省への報告期限だった。
今月10日の決算会見で、鈴木会長は社内での不正を否定したばかり。18日の会見では「10日時点では認識していなかった」と弁明した。
屋内で部品ごとに測定
ではスズキの不正とはどんなものだったのか。道路運送車両法は、空気と路面から受ける抵抗を合わせた「走行抵抗」について、屋外の走行試験で測定するよう求めている。スズキはタイヤやブレーキ、トランスミッションなど抵抗値に関連する各部品について、屋内の試験機を使って個別に実験。はじき出された抵抗値を足し合わせて、走行抵抗を推算していた。
この試験方法を採用していることが確認されたのは、現在販売している16車種すべて。国交省が調査を指示したすべての車種で、不正測定が行われていたことになる。これらのクルマの累計販売台数は210万台を超える。海外の販売車種については「(各国の)ルールに従っている」(鈴木会長)という。
現在カタログに掲載されている燃費との差異は、三菱自動車が明らかにしている値である「5%には全然届かない」(技術統括の本田治副社長)として、修正はしない考えだ。
三菱自動車は開発した軽自動車4車種について、燃費を見かけ上よくする目的で走行抵抗値を改ざん。また、多目的スポーツ車(SUV)の「アウトランダー」などで、類似車種の測定値をもとに机上計算で抵抗値を出すなどしていた。
これに対して、スズキは燃費の水増し目的で行った不正ではないという認識を示した。同社が所有する静岡県のテストコースは、海風の影響で測定値にばらつきが出やすいため、技術者が屋内で部品ごとに測定をする方法を考案したという。
ほかにも本田副社長は「どのような形で真の(抵抗)値に近づけることができるかの挑戦だった」「16車種において走行試験を行わなかったものはない」などとして、三菱自動車の不正との違いを繰り返し強調した。
しかし、両社に通底する類似点もある。上司にもの申せぬ企業風土だ。三菱自動車では、軽自動車の燃費目標が開発途中で繰り返し引き上げられる中、目標の見直しや開発期間の延長を進言できなかった現場技術者が不正に手を染めた。スズキにおいても、テストコースなどの環境が実態にそぐわないことが上層部に十分に伝わらないままだった。
鈴木会長は「現場は苦労してやっていた。(テストコースに)防風壁をつくるなどの設備投資に至らなかった点は反省している」と肩を落とした。
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