先送りの場合、安倍首相の政治判断で決める構図となりそうだが、これまでの発言との整合性やアベノミクスの現状に対する政治責任、再延期する増税を確実に実施するための手だてが問われることになる。

 同時に、消費増税を先送りするなら社会保障充実のための財源をどう確保するのか。市場の信認を維持するためにも、財政再建への道筋を含め明確に示すことが欠かせない。

政権運営の主導権を握り続ける首相

 増税の判断は衆院解散戦略と密接に絡む。7月の参院選前に先送りを表明すれば参院選で信を問う形になり、安倍首相にとっては解散時期について別途検討できる利点がある。

 ただ、安倍首相周辺からも「2014年の先送り時、政権公約にない税制で重大な変更を行う以上、信を問うとの理由で解散に打って出た経緯がある。参院選は中間評価の場であり、先送りするなら衆院選で問うのが常道だ」との声が出ている。

 また、月末に閣議決定される経済財政運営の基本方針(骨太方針)の原案には消費増税を前提にした内容、文言が入っている。

 経済官庁幹部は「首相官邸から急な見直しの指示があれば別だが、閣議決定した直後に先送りに急旋回するのは批判されかねない」と指摘する。

 自民党の稲田朋美政調会長が先送りする場合の判断時期について参院選と関係しないとの認識を示したように、与党内では「2016年4~6月期の経済情勢を見極めるためにも、判断は参院選後にすべきだ」(自民のベテラン議員)との声も根強い。

 衆院解散時期もにらみながら、タイミングを見定めて増税の可否を判断しようとしている安倍首相。難しい政治判断を迫られているが、特に昨年秋以降、衆院解散や増税先送りというカードをちらつかせることで、政権運営の選択肢を広げてきたことは確かだ。

 また、安倍首相の自民党総裁任期は2018年9月まで。これまでの自民党なら昨年9月の総裁再選後、「ポスト安倍」を巡る駆け引きが活発化していても不思議でない。それなのに、安倍首相は政権運営の主導権を握り続け、これまでのところはレームダック(死に体)化を阻止することに成功してきたと言える。

 サミットの晴れ舞台でホスト役を務め、米国のオバマ大統領の歴史的な広島訪問も決まった。思惑通りの政権運営にさらに追い風が吹く中、いつ、どのような判断を下すのか。長期政権を見据える安倍首相が政局の主役を演じる日々が続く。