スリーダイヤが日産自動車の傘下に入る。5月12日、日産自動車は三菱自動車に2370億円を出資して筆頭株主となることを発表した。これまで三菱重工業が持分法適用会社とするなど、三菱グループ3社が三菱自動車の経営を支えてきた。日産の出資で三菱グループの出資比率は20%程度まで下がる見込み。

会見で満面の笑みを見せた日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長 (写真:Bloomberg/Getty Images)
会見で満面の笑みを見せた日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長 (写真:Bloomberg/Getty Images)

 4月20日に発覚した三菱自動車の燃費データの不正問題は依然として調査段階にあり、多くの事実の解明が待たれている。各種の補償の負担や販売へのダメージなどで経営への深刻なダメージが予想される中、渦中の軽自動車事業で提携関係にあった日産が救済の手を差し伸べることになる。

 三菱自動車はこの10数年で、独ダイムラークライスラー(当時)、三菱グループと「庇護者」を変えてきた。そして次は日産。「3度目の正直」で危機からの脱出に挑むことになる。

 三菱自動車の益子修会長は会見で、「開発部門への日産からの人的・技術的支援によって、風土改革を促進できると期待する」と発言。今回の燃費データ不正問題も含め、長年にわたって組織の風通しの悪さや隠蔽体質が課題とされながら、根本的な解決には至らなかった。軽自動車事業の提携関係を継続することに加え、新型車の開発や次世代技術の開発といった広範な領域で日産とのアライアンスを進め、思い切った「外科手術」によって組織風土の改革を進めようとしている。

 一方の日産のカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)は、三菱自動車の救済というよりも、両社のウィン‐ウィンの関係を強調。「三菱自動車の筆頭株主になることで、日産にとってもメリットがある。既にわかっているだけでも、22億ドルもの出資を正当化できる十分なシナジー効果が期待できる」と語った。

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