新たにベネッセホールディングス社長に就任する、現副社長兼CAO(最高管理責任者)の福原賢一氏。

セブン&アイの騒動とは違う

 顧客や従業員への感謝の想いを語る場面では言葉を詰まらせた原田氏だったが、それを除けばいつもの強気の発言が続いた。

 今後、ベネッセが取り組むべき課題として、潜在顧客のリストの拡大とハイタッチ戦略の充実、そして商品力の強化の3つ挙げ、「ロードマップは明確になっている」と強調。「今まさに回復のスタートポイントで、引責辞任ということは考えたこともないし、そういう声も聞かない」「今から回復するのに逃げるのかと聞かれそうだが、リーダーシップによる変革のフェーズは終わり、実行のステージに移る」と説明した。

 また、「デジタル戦略の明確化に貢献できた」「アップルはデジタル、マクドナルドはピープルビジネス。ベネッセでは両方の経験を生かすことができて、やりがいを感じていた」とも振り返った。

 原田氏は、創業家からの信任を失ったとして、鈴木敏文会長が突然の辞任を表明したセブン&アイ・ホールディングスの件を引合いに出し、「そういう目で見られるかなという思いもあったが、トップのケジメとして退任を決めた」とも発言。ゴールデンウィーク明けに、ベネッセ創業家2代目の福武總一郎最高顧問に退任の意向を伝えた際には「もちろん引き留めにあった」とも明かし、あくまで自らの意志による退任であると会見場の記者にクギを刺した。

「プロ経営者」による改革の頓挫は2度目

 後任には、副社長兼CAO(最高管理責任者)の福原賢一氏が昇格。原田氏が兼務していた事業会社ベネッセコーポレーション社長には、副社長兼海外事業カンパニー長兼ベネッセコーポレーション副社長の小林仁氏が就く。福原氏は、原田氏の「脇目も振らず実行してほしい」という言葉に、「業績回復に邁進したい。(原田氏の退任には)異論もあるが、トップのケジメのつけ方として真摯に学ばせてもらった」と応えた。

 2年間という短い期間だったが、原田氏がベネッセに与えた影響は今後、プラスに働くのだろうか。社長就任当初、原田氏は「ベネッセの社員は教材作りなどで優秀だが、学級委員タイプでマーケティングや財務などの経営の基本ができていない」とし、マクドナルドやコンサルティング会社など社外から多くの幹部を招聘して、トップダウンで社員の意識改革を進めようとしてきた。最高顧問の福武氏が期待したところも、そうした意識改革だった。福武氏は原田氏の招聘にあたり、日経ビジネスのインタビューで「原田氏を社長に招いたのは、このまま放置しておけば取り返しのつかないことになると思ったからだ。会社に体力があるうちに、グループ全体を立て直したい。それができるギリギリのタイミングだった」と語っている。

 実は、ベネッセは2003年にも、社外からプロ経営者を社長に招いたことがある。ソニー出身の森本昌義氏だ。当時も、ゆとり教育開始による環境変化への対応が遅れ、進研ゼミの会員数が急減していた。だが、その森本氏もスキャンダルによって2007年に辞任。森本氏も脱DM依存を目指していたが、その後は改革が停滞し、再びDM依存体質へ戻っていった。

 「森本氏を招聘した時とは異なる」と原田氏に抜本的なベネッセの改革を期待した福武氏だったが、原田改革も2年で挫折した。バトンを受け継ぐ福原氏と小林氏は、原田流を踏襲した改革を進めるのか、それとも、再び原田路線とは決別して新たな改革に挑むのか。いずれにしても、進研ゼミの会員減少が止まらない中で、ベネッセ再建に残された時間は少ない。