進まないDM依存からの脱却

 原田氏は、個人情報漏洩事件が発覚する以前から、DM(ダイレクトメール)による新規会員獲得に依存するビジネスモデルからの脱却を進めようとしていた。ベネッセは、長年蓄積してきた国内最大級の潜在顧客リストを基にDMを発送し、進研ゼミの会員を獲得することを最大の営業上の強みとしてきた。その虎の子の個人情報が流出したことで、図らずもDM依存体質からの脱却を一気に進める必要性に迫られた。

 だが、皮肉にも、改革を進めるうちに莫大な潜在顧客リストを基にしたDMの威力を思い知らされることになったようだ。原田氏は、「2015年3月期は営業を一時凍結したことで潜在顧客リストが5分の1になり、これをベースに会員獲得をしたがマーケティングに限界があった。2016年3月期は、潜在顧客リストは3分の1に回復したが、これも限界があった」と説明した。

 DMに替わって原田氏が重視したのが、「ハイタッチ戦略」だ。その柱として掲げたのは、ベネッセの社員が直接、潜在顧客に教材の良さなどを説明する拠点として全国に500カ所展開しようとした「エリアベネッセ」だった。だが、これについても、今回の会見では「6大都市に旗艦店を展開する」(原田氏)と述べるにとどめた。既に、エリアベネッセの計画は大幅に縮小し、既存の塾との提携などを進めていた。

得意のはずのデジタル化にも誤算

 原田氏が肝いりで進めてきた進研ゼミのデジタル化にも、誤算があった。今年4月から、紙の教材とタブレットを活用するデジタル教材を組み合わせた新サービス「進研ゼミプラス」を開始したが、当初見込んでいたほど会員を獲得できなかった。

  原田氏が社長に就任する前の2014年4月から、ベネッセは独自開発した専用タブレットを使ったデジタル教材「チャレンジタッチ」を開始していた。しかし、原田氏は専用タブレットではなく、汎用的な「iPad」を使ったデジタル教材を重視する方針に転換。iPadを持っていない会員には、iPadの機種に応じて月額1980円、もしくは2480円(いずれも税込)でレンタルするサービスも用意した。

 だが、「月額2500円でも一般家庭では負担が重かった。(iPadでは勉強以外に)インターネットへのアクセスやゲームができてしまうことに、親の拒否反応が大きかった」(原田氏)。そこで、より低価格のタブレットや専用タブレットを使ったサービスを再び検討してくと言う。