「AA型種類株」が生きる

 為替の影響で今期が減益を見込むことは、事前に予測されていた。問題はその幅だ。40%もの減益見込は事前の予測を上回る水準。人件費の増加やタカタ製エアバッグのリコールなどに絡む品質関連費用の負担増を想定していることもあるが、トヨタとして「攻めの姿勢」を崩さないことも影響している。

 それが将来に向けた投資だ。2017年3月期の研究開発費は1兆800億円と、前期比で250億円上積みする。自動運転分野やAI(人工知能)などへの先端技術の開発にブレーキはかけない。設備投資も同様に575億円増の1兆3500億円を予定している。

 昨年12月に投入した新型プリウスから始まった新しい設計・開発手法TNGAの対象が徐々に別の新車に広がる予定で、それに伴う生産設備などの更新が必要なためだ。伊地知隆彦副社長は「将来に向けた投資はブレることなく続ける」と言う。

 そこには、過去の反省がある。2009年3月期、円高と販売台数減少のダブルパンチで大幅な赤字に陥ったトヨタは「緊急収益改善の取り組み」として、研究開発費や設備投資を絞り込んだ。当初、8200億円を予定していた2010年3月期の研究開発も結果的には7253億円まで削られ、次世代技術の研究開発の停滞や人材の不足につながった。

 収益悪化の主な理由が為替であったとしても、利益が減れば先行投資の削減圧力は強くなる。そうした時でも投資を続けるための準備をトヨタは進めてきた。その1つが、2015年から発行している新型株式「AA型種類株式」。発行済み株式数の約5%を上限とし、普通株より2割以上高く株価を設定した議決権付きの株式だ。資金の用途を中長期の研究開発に限定しているのが特徴で、既に約5000億円を調達している。

 長期保有を前提とする株主から資金調達することで、目先の業績の変動に影響されずに投資を続ける。そんな「カイゼン」が足下の逆風下でも威力を発揮しようとしている。