そして、こうした流れは経済面からも後押しされる。

 中国の台頭による影響力の拡大は、かつてとは比較にならない。韓国経済の対中依存度は圧倒的で、貿易の約4分の1、中国人観光客は8割を占める。THAAD配備での中国による経済報復で韓国経済が悲鳴を上げる結果になっていることを見れば、そのインパクトの大きさをうかがい知ることができる。

 今後、この傾向は中国市場の成長とともに拡大こそすれ縮小することはない。また文・新大統領にとっては、疲弊した国内経済の立て直しが優先課題である。そのためにも、経済的に中国シフトにならざるを得ない。中国のパワーゲームでのポジションが強くなる所以だ。

日本の安全保障の「前提」が崩れるかもしれない

 そうした中で、日本は当面はこれまでどおり「日米韓の連携」の重要性の旗は掲げ続けるべきだが、米中のパワーゲームの行方次第では、いつまでもそれを言っていればいいわけではない。

 米韓同盟は日本が直接大陸と向き合うことを避けるための、いわば「盾」であった。トランプ政権によってその米韓同盟が将来流動化しかねない中で、それがあることを前提とした、これまでの日本の安全保障の在り方を根本的に考え直す必要に迫られることも想定しておくべきだろう。

 また、日本にとって、慰安婦問題での日韓合意は、米国の事実上の仲介があってこそ成立したものだ。これは「日米韓の連携」を維持するために、その障害になる問題を除去するとの要素が強い。日韓双方の譲歩はそうした米国の意向に大きく影響される。今後その前提が崩れた場合、双方に譲歩の理由を見出しうるのだろうか。

 問題は単に韓国が対日強硬路線かどうかだけではない。米国の対韓戦略によって大きく影響され、問題が再噴出する危険性をはらんでいる。

日本企業のサプライチェーンもリスクにさらされる

 さらに日本企業も将来の韓国リスクを考えるべきだろう。

 日本企業はこれまで韓国進出や部品供給など日韓の間の緊密なサプライチェーンの形成など、グローバル戦略の中で韓国を位置づけてきた。その前提として、価値観の共有、安全保障の連携などを背景とした安定的な環境が大きかった。その前提が大きく揺らぐ可能性もある。

 仮に、今後中国の影響力が強まった時にどういう影響が出るか。一部では将来の技術流出を懸念する向きもある。

 日本企業にとって韓国投資の在り方、韓国企業との連携の在り方の再検討も必要になる事態もあり得るのだ。

 今起こっていることを朝鮮半島の大変革期の入り口として捉えて、新たな韓国大統領を見るべきだろう。日本は経済、安全保障いずれの面でもこれまでの延長線で韓国を考えていればよいわけではない。

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