朝鮮半島は非核化・中立化か?

 問題はこれからの展開だ。

 私は先般の米中首脳会談について、4月10日の記事(「米中貿易戦争の激化は秋以降、日本も巻き添えか」←http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/040900656/)で以下のように指摘した。

 「中長期的には、朝鮮半島の将来像をどう描くかという、本質的な問題に米中は向き合うことになるだろう。朝鮮半島を統一して非核化、中立化する考えが出てきてもおかしくない。その時深刻な影響を受けるのが日本である」

 最近、米中それぞれでの学者、識者の中にもこのような論調が期せずして同時期に出てきているのも注目すべきだ。親北、反米の韓国新大統領を迎えて、ますますこの指摘が現実味を帯びてくる可能性が高くなるのはないだろうか。

 そして、これからの日本に必要なのは、そういう事態を想定した備えではないか。

 そう考える背景は次の通りだ。

 まず第1に、北朝鮮の核は米国への直接的脅威にもなる可能性が出てきて、米国にとっての深刻度はかつてとは比較にならないほど高まっている。自国第一主義を取るトランプ政権としては、自国への脅威さえ取り除かれれば、他は譲歩する可能性もある。トランプ政権の対外政策の優先度は中東であって、自国への直接的な脅威がなければ、基本的には北朝鮮ではない。

 中国はその足元を見て、取引をするチャンスと思ってもおかしくない。米国に対して朝鮮半島の非核化、中立化のカードを切ってくるだろう。そして、米韓同盟を揺さぶり、在韓米軍の撤退というシナリオを描いている。

 トランプ大統領の発言から、米中は「北朝鮮の核」と「通商」を取引したと言われている。しかし、中国の意図はそこにはない。中国が取引する対象は「通商」ではなく、「朝鮮半島」だろう。

 トランプ大統領が、米中首脳会談で習近平主席から「韓国は歴史的に中国の一部だった」と説明を受けたと語ったことが大きな波紋を起こしている。この発言の本質的意味は、北朝鮮問題をトランプ大統領が持ち出した時、習近平主席は朝鮮半島全体の問題を持ち出していることにある。

 第2に、米国にとっての韓国の価値も大きく変化している。先日、ティラーソン国務長官が「韓国は同盟国ではなく、“重要なパートナー”」と発言したことに、韓国内に衝撃が走った。しかし、それは恐らく米国の本音だろう。韓国には米国から見捨てられるとの危機感さえある。

 今後、韓国が反米になればなるほど、朝鮮半島を巡る米中間の「大きな取引」は現実味を帯びてくる。米国にとっての韓国、中国にとっての北朝鮮がそれぞれお荷物となって、米韓同盟、中朝軍事同盟が形骸化していくプロセスにあるからだ。

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