被害の少ない地域でもゴミが山積みに
ゴミ問題については、熊本地震への対応で今後の検討課題が見えてきた。
周辺の市町村から多くの収集車が応援に来ていた。環境省の災害廃棄物対策室の小岩真之対策官は、「応援はこれまでの災害の中でも早かった」と言う。
一方で、一時的にかなりのゴミが町中にあふれたのも確かだ。
避難所でも段ボールやペットボトルなど山積みになり、衛生上の問題が発生していた。そこである支援者は、救援物資を運んだトラックの帰り便で段ボールやペットボトルなどを積んで、地元に帰った。
しかし、廃棄物処理行政を司る環境省はこうした行為に難色を示している。廃棄物処理法の問題があるからだ。
まずは対象物が、ゴミなのか資源物かで扱いが異なる。仮にゴミだった場合、許可を受けた廃棄物処理事業者しかゴミを収集運搬することはできない。救援物資を積んだトラックが帰り便で段ボールやペットボトルなどを持ち帰るのは、廃棄物処理法上はグレーゾーンと言える。
今後はこうした緊急事態において、柔軟にゴミを収集運搬できるように政策を整備する必要がありそうだ。
また、今回のゴミ問題で象徴的のは、熊本市の被害の少ない地域でもゴミが片付けられていない点だ。熊本市は市町村合併を繰り返して拡大しており、市がゴミ処理を一元管理しているため、特定の地域を優遇することは難しいのだ。
今回は直下型の地震で、少し離れた場所でも被害の状況が全く異なっている。そのため、同じ熊本市内でもいつも通りの生活をしている人と、避難所暮らしを強いられるような非日常を過ごす人が混在している。
緊急事態においてはゴミ処理は後回しかもしれないが、平時には家の周囲に滞留したままのゴミが気になって仕方がない。市町村合併で拡大してきた熊本市では、そのギャップは特に大きいように感じた。
被災地から遠く離れていたり、土地勘がないと被災地への印象が画一的になりがちだ。
だが、実際には同じ市町村に暮らしていても多様な生活があり、多様なニーズがある。ゴミ問題から震災対応の1つの断面が見えた。

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