タカタ製エアバッグは、作動時に金属製部品(インフレーター)が異常破裂する欠陥が報告されている。今回の合意は、異常破裂が過去に1件でも起きていれば、同じタイプのエアバッグは全てリコールするというものだ。
記者はタカタ製エアバッグが社会問題化した2014年春から取材を続けてきた。今回の合意には「ようやくここまで来たか」という感想を抱く。というのも、タカタ問題は①自動車メーカー各社がリコールを発表する②対象外だったエアバッグでも異常破裂が判明する③各社が追加リコールを発表する――というお決まりのパターンを繰り返してきたからだ。

あらためて経緯を振り返ろう。タカタ製エアバッグをめぐる初めてのリコールは2008年11月。運転席エアバッグに製造上のミスがあったとして、ホンダが北米市場で始めた。このときの対象は約4000台に過ぎなかった。
ところが、別タイプのエアバッグでも次々に欠陥が見つかる。自動車各社はそのたびにリコール対象の見直しを迫られた。2015年だけでも、記者は少なくとも20回は「自動車メーカーが追加リコールを発表した」という記事を日本経済新聞で書いた。対象台数は当初よりケタが4つ繰り上がり、世界で6000万台超という規模まで膨らんだ。今回の合意で、対象車両は全世界で延べ1億台を超えるのが確実となった。
なぜリコール対象の拡大が止まらなかったのか。最大の原因は、異常破裂の原因を特定できなかったことにある。
タカタは当初、自社工場における製造ミスを欠陥の原因とみていた。タカタはエアバッグを膨らます火薬として、化学物質「硝酸アンモニウム」を使う。この物質はもともと湿気に弱い性質を持っている。それにも関わらず、タカタの北米の工場では、火薬を湿気にさらされやすい状態で放置するなど、ずさんな品質管理が常態化していた。
ところが、製造ミスが無かったはずのエアバッグでも異常破裂が起きる。米フロリダ州など1年を通じて気温が高く、湿度も高い地域からの報告例が多いため「どうやら生産に問題がなくても、車両が置かれた環境により湿気を帯びると経年劣化するらしい」とは分かる。だが、どれだけ湿気を吸うと異常破裂するのか、どんな設計が問題だったのかまでは分からない。
原因を特定できなければ、適切なリコール対象も割り出せない。自動車メーカーは2003年1月製造のエアバッグで異常破裂が判明したので、ひとまず同年12月末までに生産した分など、暫定的なリコール対象の設定を続けるしかなかった。
それだけに、今回の合意の意義は大きい。
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