全2707文字

「米中貿易摩擦は中間選挙まで」と見るのは表層的

 当然、この2つのテーマは時間軸が違う。前者は中間選挙に向けた短期での成果を求める。トランプ氏自身の関心、政治的思惑はもちろんここにある。

 しかし、だからと言って、「米中貿易摩擦は中間選挙まで」と見るのは早計だ。後者は米国議会、産業界の間に相当広がっている最大懸念であることは、米国に行けば肌身を持って感じるだろう。根深い問題だけに、トランプ政権の短期的取引だけで収束させられるようなものではない。中間選挙までで収束すると見るのは甘すぎる。中国も習近平政権の看板政策で国の基本方針だけに、おいそれとは応じられないので、当然長期化するだろう。

 中国側としてはまずは反発、応酬をして米国の出方を見定めるという、定石としての「様子見」に出た。今回の中国側の参加者が実質、習近平主席の信頼厚い劉鶴副首相だけ(商務相は陪席)だったことがそれを物語っている。そして同時に国内の強硬世論を意識して、弱腰との印象を与えないよう、米国へ逆要求することも怠りなくしている。

 当初、中国側は、トランプ氏が前者にしか関心がないことから、前者についての落としどころを探る方針だった。4月10日のボアオ・アジアフォーラムで自動車や金融の市場開放、輸入拡大を打ち出したが、これはそのための瀬踏みをしたものだ。事態を収束させたい中国としては、この限りではコントロール可能と見ていたようだ。

 ところが後者の問題がより前面に出てきて、ナバロ大統領補佐官、クドロー国家経済会議委員長まで訪中する事態にまでなったのは予定外だった。

 中国としてはトランプ氏の短期的関心にだけ対応すればよいのか、この問題の深度と対応の必要性を推し量っている最中である。

日本は高みの見物なのか

 まず前者のオールドエコノミーの分野では、中国が切ってくる市場開放のカードは基本的には歓迎すべきだ。ただし、それが米国企業だけを優遇する差別的なものにならないか、注意深く見ていく必要がある。保険など金融市場の開放でも中国では不透明な運用が十分予想される。この点で欧州連合(EU)との連携も大事だ。

 後者の「中国製造2025」関連については、日本はもっと直接的な当事者だ。例えば、新エネルギー自動車の生産では強制的に技術移転させられる恐れがある。この分野の死命を制する電池産業でも日本企業の優位性を奪うべく、中国企業からの調達を強制しようとしている。

 日本企業が国際競争力を有する産業用ロボットの技術は、中国にとって垂涎の的だ。海外企業の買収や政府ファンドによる大規模な補助金で、一気に凌駕することを狙っている。知的財産権についても要注意だ。中国は今後、保護を強化して“プロパテント”に舵を切ったかのように言うが、中国企業を差別的に優遇する実態があり、日本企業も要警戒だ。これらについては別途、詳述することにしたい。

 これらの問題は単に米中間の技術覇権の問題と捉えると本質を見誤る。むしろ国家主導の市場歪曲的な政策による異質な経済秩序と捉えて、腰を据えて対処すべきだ。

 中国を動かすには米国の圧力が不可欠であるが、米中二国間だけで解決できる問題でもない。クドロー国家経済会議委員長も最近、対中有志連合の必要性を唱える理由はそこにある。この点は、かつて私も指摘した点である(参照:中国と米国の「一方的制裁の応酬」という悪夢)。問題はトランプ氏の頭に入るかどうかだ。

 いずれにしても米中間の応酬に連動して、日米欧が連携して多国間の仕組みの中で、中国に是正を求めていく動きが不可欠である。