オムニ戦略は「これからも続ける」

鈴木会長の肝いりで進めてきたグループ戦略のオムニチャネルは今後も続けるのでしょうか。セブンイレブン加盟店やグループ傘下の事業会社からは、「オムニが最優先され性急に進められている」などと不満の声も出ています。

井阪:EC(電子商取引)が、小売り市場全体の6~7%のウエイトを占める存在になっているのも事実です。これからはますます、ネット通販を使う人が増えるでしょう。であれば、そこに対しては、しっかりと対応しなくてはなりません。これが前提条件としてあります。

 そのうえで、オムニ戦略について、ユーザビリティーや使い勝手の悪さがあるなら、それは評価・修正していかなくてはなりません。全体感としてオムニチャネルの目指すべき方向は間違っていないと思います。

誰がオムニ戦略を主導するのでしょう。

井阪:新体制では私と、(セブン&アイ副社長に就く)後藤(克弘)が一緒になって見ていきます。優先順位は極めて高いですね。

鈴木会長の次男で、これまでオムニチャネル戦略を率いてきた、鈴木康弘取締役はどうなるのでしょう。

井阪:彼は情報システムについて深い知識を持っていて、それを豊かな表現力で説明する点では極めて優れた才能を持っています。今後もオムニ戦略には関わっていただくと思います。情報システムに軸足を置いていただいて、ユーザビリティーの高いシステムを作っていきたいと思いますね。

創業家、株主…「求めるゴールは一緒」

この先のセブン&アイの経営で難しいのが、ステークホルダー間の調整ではないかと察します。創業家の伊藤家、長く鈴木会長に仕えてきた幹部や社員、米投資会社のサードポイント……。それぞれとどんな距離を取りながら経営するつもりでしょうか。

井阪:私はそんなに難しいことではないと思っています。みなさん、求めているゴールは一緒で、セブン&アイが本当に信頼される誠実な企業であり続けることでしょう。それを達成しないといけない、というのが1つのゴールでしょう。

 社員が生き生きと働けて、セブンイレブンの加盟店ものびのびと商売ができる。結果として利益がしっかり出れば、全てのステークホルダーが満足できます。それを、どういう形で実現するのか、しっかりと対話をしていきたいと思っています。

サードポイントが今後、「イトーヨーカ堂を売却せよ」と主張すれば、創業家の伊藤家の反対も予想され、板挟みに遭う可能性もあります。

井阪:仮定の話なので何とも答えづらいのですが、やはり目的はみなさん一緒です。良い企業でいてほしいということを求めているのだから、「よい企業」とは何かしっかりと定義をし、目指す方向を固めて実践していくことですね。

鈴木会長去りし後、「私も毎日弁当を試食したい」

鈴木会長は引退後、本社ビルから出ていった方がいいと考えていますか。

井阪:まだ調整中なので、具体的には5月26日の株主総会までに答えを出したいと思っています。

鈴木会長はほぼ毎日、セブンイレブンの弁当などを試食し、良し悪しを評価してきました。同じように井阪さんも毎日、弁当を試食するのでしょうか。

井阪:できるだけ食べたいと思っています。

つまり鈴木会長が実践してきたことを代わりに続けていく、と。

井阪:私は会長から、絶対価値の追求を教えこまれてきました。セブンイレブンでは商品部の経験が長かったので、毎日冷や汗をかきながら、会長に商品のプレゼンテーションしてきたわけです。だからこれから先も、価値については一歩も譲らずにやっていきたいと思っています。ですから是非、弁当も食べ続けたいですね。