米アップルが今年3月末に発売した新型スマートフォン「iPhone SE」が世界的に供給不足となっている。スマホの大画面化を敬遠する消費者の需要をつかみ、アップルの想定以上に売れている。ただ、部品メーカーの在庫不足も“玉不足”の一因だ。

 「想定以上の品薄。64GBモデルは今予約しても1カ月待ちです」

 4月28日、都内にあるビックカメラの携帯電話売り場。賑わいを見せる店頭の様子と反して、販売員は複雑そうな表情でこう話す。

米アップルが3月末に発売した「iPhone SE」(中央)は画面サイズが4インチ。既存モデルの「iPhone 6s」(左、4.7インチ)、「iPhone 6sプラス」(右、5.5インチ)と比べると小型で、端末価格も安いので世界中で需要が伸びている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
米アップルが3月末に発売した「iPhone SE」(中央)は画面サイズが4インチ。既存モデルの「iPhone 6s」(左、4.7インチ)、「iPhone 6sプラス」(右、5.5インチ)と比べると小型で、端末価格も安いので世界中で需要が伸びている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 3月31日に発売した米アップルの新型スマートフォン「iPhone SE」が、想定以上の売れ行きを見せている。「前回のiPhone 6sと比べて、入荷量に数倍の開きがあるくらい少ない」(前出の販売員)と言い、発売から1カ月がたった今でも入手しにくい状況だ。同店舗だけではない。都内の別の販売店でも、「SEの入荷は1週間に1度あるかないか。1度の入荷数も2〜3台だけ。顧客の手に渡るのに最低でも4週間かかってしまう」と話す。

小型化好む消費者をつかむ

 SEは2世代前の主力モデル「iPhone 5s」と同じ4インチの小型画面を採用。基本機能は最新の6sに劣らないが、メーカー希望小売価格は16GBモデルで税別4万7800円と、6sに比べ約3万円も安い。

 アップル側は当初、計1000万台前後の販売を計画していたと見られる。年2億台超を販売する同社にとっては1割にも満たない数字だ。しかし、蓋を開けてみればスマホの大画面化や高価格化を敬遠する消費者の需要をつかみ、想定を超える売れ行きを記録している。品薄傾向は日本だけではない。米国や中国の地元メディアによると、家電量販店や小売店で在庫がおおむねなくなっており、入荷待ちの状態が続いているようだ。

 なぜここまで品薄状態となっているのか。

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