日本郵政グループの日本郵便は26日、新社長に三井住友アセットマネジメントの横山邦男社長(59)を招く方針を固めた。6月までに就任する。旧郵政省出身の髙橋亨社長(61)は会長に就く。郵政グループは持ち株会社の日本郵政の下に、日本郵便とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険がぶら下がる構成となっている。2007年のグループ発足以降で初めて、4社すべての社長が民間からの起用となる。

 郵政グループは昨年、東京証券取引所に株式上場を果たした。民間人のトップ起用が増えたこともあり、一見すると民営化の道筋を着実に歩んでいるように見える。しかし、一連の人事の流れを振り返ると、そこから見えてくるのは、いまだに「国営」から抜け出せない郵政グループの本質だ。

 明治時代に官業から始まった郵政グループは、政治と不可分な歴史を持つ。2007年に民営化してからも、時の政権が人事も含めて経営方針を翻弄する時代が続いてきた。今回の人事について、ある郵政関係者は「横山氏の社長就任を推してきたのは政府だった」と明かす。

横山 邦男氏

 横山氏は三井住友銀行の出身だ。2006年に同行元頭取だった西川善文氏が日本郵政社長(当時は準備会社)に就任したことに伴い、懐刀として同社に出向。2007年には専務執行役として経営の中枢を担った。しかし、2009年に民主党への政権交代が起きたことで状況は一変。西川氏が事実上、更迭されたため、横山氏も古巣に戻ることとなった。

 志半ばで郵政を去った横山氏にとって、今回の人事は捲土重来の機会でもある。2006年当時、西川氏を起用したのが自民党政権で、横山氏がその枠組みの中にいたことと、今回の復活人事は無関係ではないとの見方も少なくない。

髙橋 亨氏(写真:北山宏一)

 日本郵便の会長に退くこととなった髙橋亨社長は役所時代から長く郵政事業に関わり、唯一のプロパートップ候補と目されていた。ただ、成長部門と期待される物流事業の立て直しに苦しむなど、業務改善は課題として残した。横山氏がこの難しい課題にどう取り組むかに注目が集まる。

 政府は日本郵政株の約8割を持っており、株主総会で出てくる議案をすべて否決できる立場にあるため、現在の力関係は確かに優位にある。しかし、郵政民営化法は日本郵政株の3分の1超を残して売却、ゆうちょ銀・かんぽ生命株は全て処分するよう定めている。政府がこれまでのような関与を出来なくなる日は来る。そうでなくとも、郵政グループはすでに上場企業だ。トップ交代があるたびに、大株主が人事に介入してくるようでは、本当の意味での完全民営化は夢物語でしかない。