タイ政府は今年3月、日本やベトナム、マレーシアなどが参加するTPP11(環太平洋経済連携協定)に参加する意向を示し、国内の利害関係者から意見聴取を始めると明らかにした。TPPは2017年1月に米国が交渉から離脱し、議論は一時、暗礁に乗り上げたが、日本の主導により今年3月、署名にこぎ着けている。これまで静観してきたタイが参加に意欲を示し始めたのはなぜか。タイ商務省貿易交渉局のオラモン・サップタウィタム局長に聞いた。

先月、タイのソムキッド副首相がTTP11に参加表明すると発言しました。
オラモン・サップタウィタム局長(以下オラモン局長):現在、我々はTPPへの参加を念頭に、国内の民間企業や農家など利害関係者との話し合う場を準備している。議論は始まったばかりで、これから様々な論点が出てくるだろう。ただ米国が昨年1月に交渉から離脱し、TPP12 からTPP11になったことで(米国が求めていた厳格な知的財産ルールの導入が凍結されるなど)妥協点が数多く生まれている。当初より加入しやすくなっているとはいえる。もっともTPPは署名にこぎ着けたとはいえ、まだ発行はしていない。その状況を注意深く見守っている。
米国抜きのTPPにタイが加入するメリットは大きくないとの意見もある。
海外企業からの直接投資を期待
TPPに現在参加している日本や、マレーシア、ベトナムといったアセアン4カ国、それにオースラリア、ニュージーランドなどの各国は我々にとって重要な貿易や投資のパートナーだ。
何より、TPPは(関税だけでなくサービスや投資環境ルールまで幅広く定めた)包括的でハイスタンダードなプラットフォームになっている。これに加入することは、我が国の投資環境を整備するうえでの大きな助けとなり、海外企業からの直接投資(FDI)が活発になることを期待している。
米トランプ大統領は今年4月、一転してTPPへの交渉復帰を示唆した。知的財産分野などで米国が再び厳しいルールの導入を求める可能性もある。影響はあるか。
オラモン局長:市場規模の大きい米国がTPPに加わることは大きなメリットだ。しかも我々はTPPへの参加を一つの目標にして、過去数年にわたって懸案だった知的財産保護について国内ルールを大幅に見直してきた。国際通貨基金(IMF)などの指標を参考にし、数々の法律や規制を導入したり、刷新したりしてきたわけだ。
その成果が出ている。たとえば米国はこれまで(2007年から11年連続で)タイを知的財産保護で特に注意が必要な「優先監視国(PWL)」に指定してきたが、2017年末にそれを解除し、「監視国(WL)」に格上げした。我が国の知的財産保護に関する取り組みが評価されたと見ている。
タイはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉にも参加している。TTP11への参加はRCEP交渉に影響を与えるか。
オラモン局長:RCEPはASEAN諸国に加え、中国やインドまで加わるとても大きな枠組みだ。特に中国とインドは我々の経済にとって欠かせないパートナーだから、(RCEP交渉の進展を)注視している。TPP11とRCEPは置かれている環境が全く異なるし、メンバーも違う。双方とも我々にとっては重要な枠組みで、タイ経済を後押しするものと考えている。
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