トランプ政権は中国の為替は問題ないと見ている

 「為替報告書」では、2015年法に基づき米国の貿易相手国について3つの基準で監視リストを発表している。3つの基準とは、(1)対米貿易黒字が200億ドル以上、(2)経済収支の対GDP(国内総生産)比が3%を上回ること、(3)自国通貨高を抑制する一方向への為替介入などとなっている。

 現在、3つの基準を満たす国はないが、2つを満たしているのが、日本、ドイツ、台湾、韓国である。実は、中国はこれまで(1)と(2)を満たしていたが、経常黒字の対GDP比が3%を下回るまで減っており、今回は(1)の基準を満たすだけになっている。

 つまり、米国政府は中国が現状の政策を続け、人民元高を抑制するための為替介入を再開しない限り、為替は問題ないと見ていることになる。今後の米中交渉は、冒頭にも指摘したとおり、2国間の貿易に関する関税・非関税障壁に焦点が移ったことになる。

 何らかの対中圧力を示すためにも、象徴的に、個別鉄鋼品目などで大幅な輸入関税率の引き上げをする程度にとどまるというのが、今回、米国で聞かれた見解である。北朝鮮でのリスクが相応に高まっているなかで、中国に圧力をかけすぎるのは、中国にも、米国にとっても良くないとの見方が、米国の有識者に多いように思われる。

米中の貿易不均衡を改善するのは難しい

 では、仮に、二国間の個別貿易交渉を締結したとして、米国の世界に対する貿易赤字は減らせるのだろうか。答えは、かなり難しいと言えよう。特に現在は、1980年代とは異なり二国間貿易の不均衡に注目しても意味がない。

 アジア地域では2001年の中国による世界貿易機関(WTO)への加盟をきっかけに、アジア域内でサプライチェーンが加速して、日本や他のアジア諸国が付加価値の高い中間財・資本財を中国へ輸出、あるいは中国・アジアに生産拠点を構えて生産し、世界最大の市場である米国に輸出する生産分業体制が進んだ。米国が中国に高関税を適用し、その状態が長期化すれば、外資系・中国系問わず企業は中国から他の国へと生産拠点を移して、そこから米国に輸出をするようになるだろう。

 米国社会が消費が旺盛で安い物を買いたい限り、海外のほうが安く生産できる以上、貿易不均衡を改善するのは難しい。