米中首脳会談のポイントは100日計画

 日米関係について言えば、4月18日に麻生副総理とペンス副大統領による日米経済対話の初会合が実施され、貿易投資ルール、経済財政・構造改革、個別分野の3項目で今後協議していくことで合意した。しかし、具体的な交渉はこれからとなったうえに、2国間の貿易交渉を望む米国と、それを回避したい日本との間での食い違いも目立った。

 今後の日米経済交渉を考える上では、米中経済関係もしっかり見ていく必要がある。そこで、4月上旬に開催された米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談を振り返ると、会談のポイントは米国の対中貿易赤字の是正に向け、100日計画を策定することで合意したことにある。米国のモノの貿易赤字は2016年で見ると世界に対して7500億ドルにもなるが、このうち中国が約半分を占める。これだけ大きな赤字の是正計画を100日で策定するというのは時間的にはかなり短い。

 100日計画は、7月にドイツで開催されるG20サミット(20カ国・地域首脳会議)に向けた準備との見方もあるようだが、トランプ大統領が今年3月末に署名した不公平貿易の是正を目指す大統領令に関係はないのだろうか。この大統領令では、90日以内に米国の貿易赤字の要因分析をするように商務長官と米通商代表部(USTR)代表に要請した。

 貿易赤字の対象となる中国を筆頭に、日本、ドイツ、韓国などについても不公正な輸入関税や輸出補助金などを徹底的に調査するであろう。それらの分析や情報を踏まえて、中国との貿易赤字を減らす計画を立てるということのようにも考えられる。

 いずれにしても、100日という短さは、選挙で公約した政策を早く実現させないといけないという焦りの表れだと言える。オバマケアの修正案もうまくいかず、トランプ大統領の政策遂行能力には大きな疑問符がついている。しかも、4月にトランプ大統領は中国を「為替操作国」と認定しないと発言し、4月14日に発表された米国財務省の「為替報告書」でも認定しなかった。あれだけやると言い続けておいて認定しなかったのだから、 なにか米中で駆け引きがあると考えるのは当然であろう。

ようやく分かった中国の為替操作の実体

 その駆け引きの道具として、北朝鮮の核実験やミサイル発射に対して政治的圧力をかけてもらうという見方が多いが、中国の為替介入についての実情をトランプ大統領がよくやく分かったということも大きいように思われる。

 実は、中国では2015年8月の人民元切り下げをきっかけに人民元安圧力が強まったことで、国内から米国などに向けて資本流出に拍車がかかってきた。人民元は、この間、対ドルで6.5%、主要通貨に対して平均で10%も安くなっている。

 一見すると、人民元安は中国の輸出を有利にするので、中国の経済刺激策のようにも見える。しかし、実態は違う。人民元安を招くと国内から海外への資本流出が止まらなくなることを懸念し、中国人民銀行(中央銀行)は、人民元安の急速な進行を何とか抑えてきた。外貨準備(中央銀行が保有する外貨資産)の取り崩しで対応してきたのだ。

 今年からは企業の対外送金などの資本流出規制の適用を強化しているため、人民元の対ドル為替レートは安定するようになっている。このため、外貨準備の取り崩しは減って、2月と3月は逆にごくわずかだが外貨準備は増加に転じている。

 つまり、ここ3年間は人民元が一段と安くなるのを抑えようと、外国為替市場に介入してきたわけであり、トランプ氏がこれまで考えてきたような国際競争力を不当に高めるために人民元安を誘導していたわけではない。トランプ氏がこれまで主張してきたように、中国が完全に自由な変動相場制に移行すれば、人民元は大幅に安くなり、ドルがもっと高くなってしまう。そのため、米国の製造業はさらに打撃を受けることになるので、米国の国益とは合わないであろう。トランプ大統領もそれが分かってきたので、中国を為替操作国と認定しないという流れが出てきたようだ。