熊本地震が発生してから1週間が経った。深刻な事態が明らかになるにつれて、企業活動に自粛ムードが広がっている。大々的な発表会を延期したり、テレビCMをACジャパンに切り換えたりする企業が相次ぐ。5年前の「3.11」と比べて、検証した。

熊本市内のアーケード街では地震の影響で営業している店舗が少ない(写真=浦川 祐史)

 東京・銀座にあるACジャパンの東京事務所。最初の大きな揺れから一夜明けた4月15日以降、事務所にかかってくる電話が普段の20倍に増えた。多くは「広告内容が不快だ」というもの。中でも「セトモノとセトモノとぶつかりっこするとすぐこわれちゃう」という相田みつを氏の詩を引用した広告への意見が目立つ。「やわらかいこころをもちましょう(2015年度全国キャンペーン)」の一環で、公共の場でおおらかな気持ちを持つように訴える内容だ。しかし、電話をかけてくる視聴者は「瀬戸物が壊れるとの言葉は地震を想起させる」と訴えるという。

 CM総合研究所(東京都港区)が在京5局を対象に実施した調査によると、ACの広告が放映された回数は熊本地震が発生してから6日間(4月14日~19日)に計650回。普段は平均すると1日数回で、全く流れない日も珍しくないという。「被害の全容がつかめていないなか、被災者の心情に配慮する」(トヨタ自動車広報)。自社広告をACに差し替える動きが相次いでいる。

出所:CM総合研究所。対象は在京キー局。午前5時から翌日午前4時59分を1日として集計

 ACは1000社を超える企業がお金を出しあって運営する公益社団法人だ。1971年に設立され、公共マナーや環境問題の啓蒙広告を制作している。ACは制作した広告をテレビ局に納入し、放映はテレビ局が判断する。災害時だけでなく、スポンサー企業が不祥事で自社広告の放映を控えたときの代打役にもなっている。

 スポンサー企業は広告の放映中止を決めると、まず電通や博報堂など広告代理店に連絡する。次に、広告代理店が各スポンサー企業の意向を「自粛リスト」として各テレビ局に伝える。

 「本日できるところからお願いします」「17日までの差し替えだったが、24日まで延長してほしい」。今回、大手広告代理店が放送局に一斉送信した「自粛リスト」を本誌は入手した。どのエリアに流す広告を自粛したいのか、いつまで自粛するのか。エクセルファイルの備考欄には生々しい表現が並ぶ。

 目立つのが「報道特番と名のつく番組では全て自粛したい」という声だ。