技術者は燃費0.1%の改善に大変な努力をする

 燃費の水増しが5~10%というのは、受け手によって様々な印象があるかもしれないが、関係者にとってはかなり大きな数字だ。

 例えばeKワゴンの中でも燃費がトップクラスのタイプでは、ガソリン1リットル当たり30.4kmと公表していた。10%の水増しだとすると、実際はおよそ3kmほど燃費が悪かったことになる。

 これは販売に大きな影響がある。まずエコカー減税の減税幅が違った可能性がある。消費者の負担額が変わるため、購入動向に響く。

 実際の走行においては、カタログ燃費ほどはでないものの、10%燃費悪化は、余分のガソリン代として日々の消費者の財布を直撃する。

 消費者にとっては税額、下取り価格、燃料代など様々な負担が増えるのだ。こうした負担について相川社長は、「燃料代も含めて補償を検討する」と語った。

 さらに消費者や株主から訴訟を起こされたり、国から制裁金を科されたりする可能性もある。日産自動車との補償問題も浮上しそうだ。

2013年には三菱自動車と日産自動車のトップが共同で軽自動車のラインオフ式に出席した。今回の燃費不正は、日産の調査が発端となった

 競合他社への影響もある。技術者にとって燃費5~10%というのは、とてつもなく大きい。というのは、技術者は0.1%の燃費を高めるだけでもたいへんな努力が必要だからだ。

 自動車メーカーの技術者が、「鉛筆なめて燃費を上げられるなんて許しがたい」と憤るのも無理はない。

 そもそも燃費向上には膨大なコストがかかる。自動車各社は燃費改善のために基礎研究から開発まで巨額の投資をしているのだ。

 分かりやすい例でいうと、確実に燃費向上に寄与するアイドリングストップ機構を導入すると、1台あたり20万円近いコストがかかる。

 今後の展開は、韓国の現代自動車グループや独フォルクスワーゲン(VW)の事例が参考になりそうだ。

 現代自動車は米国で燃費の水増し表示が発覚し、販売が急減した。VWは米国でディーゼル車の排ガス性能を偽装したことが発覚し、ブランドを大きく失墜させてしまった。訴訟などが起こされており、未だに負担額の全貌は見えていない。

 いずれも本来ならば負担すべきコストを意図的に省いて、関係者を欺いた点で、悪質性は高い。

 三菱自も意図的な不正で関係者を欺いており、VWの排ガス不正に並ぶほどの悪質性がある。今後、行政や司法、消費者から厳しい追及を受けることは避けられないだろう。