中国ネット通販最大手、アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)会長とタイ政府のソムキット副首相、ウッタマ工業相らは19日、タイの首都バンコクで会見を開き、IT関連分野でタイ政府とアリババとが包括的に提携したと発表した。

バンコクで会見するアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)会長(右から2番目)とタイ政府のソムキット副首相(左から2番目)、ウッタマ工業相(左端)

 ECの先端技術やビッグデータ、AI(人工知能)、さらに最新のロジスティクス分野の研究拠点をバンコク近郊に設立し、加えてIT人材の養成や中小企業のネットリテラシー強化と通販利用の促進、タイ米を始めとする農作物の中国市場での販売促進などでも協力していく方針だ。現地紙の報道によれば、アリババの投資額は110億バーツ(約350億円)程度になる。ジャック・マー会長は会見で「これは投資の第一ステージ」と発言しており、今後も継続してタイでの事業に資金を投じていく考えを明らかにした。

アリババが打ち出す将来への布石

 タイのネット通販の市場規模は拡大を続けており、東南アジア全域でも2025年には1兆円を超える見通しだ。これを見越してアリババは2016年、タイを含む東南アジア最大手のネット通販企業、LAZADA(ラザダ)に1000億円規模の投資を実施して筆頭株主となり、さらに今年3月にも2000億円規模の追加投資を行っている。

 今回、アリババはタイ政府との協力関係を深めることで、中長期的にこの成長市場で存在感を発揮するための布石を打ったと言える。ジャック・マー会長は会見で「我々が焦点を当てているのは中小企業、農家、若者、女性だ。彼らをサポートしていきたい」と語った。

 まだタイでは中小企業のIT利用率は低く、うまく事業に活かせていない。タイは農産物が豊富だが、販売や流通インフラが十分に整っているとは言い難いため、農家は過剰生産と価格の下落に苦しんでいる。両者にネット通販やITという有力なツールと中国という巨大市場へのアクセスルートを提供できれば、アリババのプラットフォームは彼らにとって欠かせないインフラになる。将来有望な若者をITエンジニアとして教育すれば、彼らはアリババの東南アジア事業を支える人材となり、さらに女性や若者はネット通販の主要顧客になる。彼らへの先行投資を通じて、アリババは今後の成長が確実される東南アジアでの足場固めを進める算段だ。

 「我々はタイの市場を支配しようとか、仕事を奪おうとかいった目的で来たわけではない。ウィンウィンのパートナーになりたい」とジャック・マー会長は強調する。ただLAZADAが展開する足元のネット通販事業に加え、今回の中長期的な取り組みがそれぞれ花開けば、結果的にアリババはタイのネット、IT分野で圧倒的な存在になるだろう。

 「我々はアジアの企業だ」、会見でジャック・マー会長は自信たっぷりにこう発言した。アリババは産業のデジタル化や農家、中小企業の支援、若者の人材開発といった取り組みを既に中国で展開し成功を収めている。そのモデルをアジア全域に広げたいとの思惑と自信が透けて見える。