栄養過剰と栄養不足が同時に起きている

これまでであれば、商品が美味しいかどうかが一番の価値だったところに、栄養改善という切り口で社会に貢献していくというミッションを明確にしたわけですね。逆に言えば、それをしなければ、グローバルでは戦えないということでしょうか。

西井氏:そうです。例えば今、先進国では栄養過剰と栄養不足が同時に問題になっています。それは、日本を含むあらゆる国と地域で起きています。メタボリックシンドロームにつながる栄養過剰と、若い女性や高齢者の栄養不足が同時に問題になっているのです。先進国だけではなく、インドネシアやブラジルなどの新興国でも似たような状況が顕在化してきています。こうした問題に正面から向き合い、解決策を提案していくことは、食品メーカーとしてあるべき姿勢でしょう。

 もちろん、こうした活動でいきなり売り上げが伸びるとは考えていません。ただし、持続的に伸びていくことになると思うのです。

 実際、塩分の過剰摂取が問題になっている岩手県など東北3県では、「ほんだし」、あるいはうま味調味料の「味の素」を料理に使うことで減塩ができることを提案したところ、ほんだしの売り上げが伸び続けています。人口が減り、高齢化が進んで1人当たりの食べる量も減っているにもかかわらずです。社会課題の解決が、ボディーブローのように売り上げ拡大につながっていくということを、営業部隊が肌で感じ始めています。

 確かにテレビコマーシャルで宣伝すると、瞬間的に売り上げはぐっと伸びます。だから必ず、得意先も営業の現場も、そういうインパクトのある施策を求めてきます。社会課題の解決を提案するような活動は、最初は効率が悪いかも分かりません。しかし、繰り返しやっていると、お客様の購買行動が変わってきます。

新たなブランドロゴでグローバル展開加速

新しいブランドロゴを開発中ですが、それもサステナビリティーを重視する姿勢をアピールするためでしょうか。

西井:新しいロゴについては、今、各国の商標や意匠のチェックをしているところで、6月ぐらいに発表できるのではないかと思っています。

 サステナビリティーというのは、企業として一番目指すべき目標だと思います。それが、あらゆるステークホルダーに対する責任でしょう。その中で、味の素は食からアミノ酸まで、様々な事業を手掛けています。特にアミノ酸の場合はほとんど素材ですから、味の素のブランドが消費者の目に直接触れることはありません。

 実は、アミノ酸の世界では既に、味の素は非常に知られたBtoBのブランドになっています。にもかかわらず、どういう会社なのかというPRそのものが、これまであまりできていませんでした。その結果、主にBtoBの事業が中心だった米国や欧州では、消費者に味の素のブランドがあまり浸透していません。

 日本や東南アジアでは、最初にスタートした商品が「味の素」でしたから、味の素=企業ブランドとして浸透しています。ところが、これまで以上にグローバルに事業を展開しようとすると、欧米も含めて、もっと分かりやすく企業イメージを伝えていかなくてはなりません。商品の「味の素」から入れない国もあるわけですから。そういう国でも、しっかりと事業活動を企業の価値、ブラント価値の向上に最終的につなげていくためには、使いやすいブランドロゴが必須です。

 新しいブランドロゴによって、食やアミノ酸を通じて、いかにローカルの社会に貢献しているのかということが、伝えやすくなります。「味の素」では、何かちょっと、母音が5つもあって発音しにくいですよね。「ア、ジ、ノ、モ、ト」と。