分散生産にコストの壁

 サプライチェーンの寸断リスクを減らすには、同じ部品を複数工場で生産する「分散生産」が効く。そんなことはトヨタとて百も承知だが、「全ての部品を分散することはできない。分散できる部品についても、代替委託先の生産能力に限界があるため、すぐに対応してもらえないこともある」(あるトヨタ関係者)のが実情だ。

 全ての部品について代替生産ができない理由は明快。分散生産にはコストがかかるからだ。自動車部品の多くは金型を必要とするが、金型の製作には通常数千万円単位のコストがかかる。生産場所を複数設ければ、それはそっくりそのまま製品価格に跳ね返る。

 「今回の被災によるサプライチェーンの寸断はフォース・マジョール(不可抗力)の範囲内ではないか」。こう見るのは、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏だ。被災リスクの対策には、事前策と事後策の両方がある。事前策としてトヨタは、前出のRESCUEシステムを構築した。事後策については、トヨタが工場を止めた原因となった部品の影響度や、復旧のためにトヨタが実践した対策の具体的内容が分からないため、現時点で評価することは難しい。

 しかし、坂口氏は「事後策でポイントになるのは、急なお願いをした時にどれだけの取引先が協力してくれるかにある。その点、トヨタは良好な関係を築けているように見える」と指摘する。現在、アイシン精機は他社への生産委託に向けた準備を急ピッチで進めている。「海外を含めれば、同様の部品を作っている工場は必ずある。輸入も含めて検討している」(同社)。

 なお、今回の工場停止に最も大きな影響を与えた部品は「ドアチェック」とされる。ドアの開く方向や動きの固さを一定に保つための部品だ。被災工場では月間90万本以上の同部品を出荷していた。

 エンジン部品では、クランクシャフトの回転をバルブ部品に伝達する部品「タイミングチェーン」のアルミ製カバーの生産が滞った。この影響はトヨタに留まらず、三菱自動車にも及んでいる。

■変更履歴
2ページ本文中、最終パラグラフに「エンジンの動力を車輪に伝達する部品」とあったのは「クランクシャフトの回転をバルブ部品に伝達する部品」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は既に修正済みです。 [2016/04/19 11:30]