PwCあらた側は16年3月期に修正の必要がないと認識?

 このため、東芝のケースで言えば16年3月期決算に問題があるというはっきりした証拠でもない限り、実態としては調査範囲を広げることはしないと言われる。

 この点について、PwCあらた側が確たる証拠を持っているかどうかは不明だ。監査法人の内情を知るある関係者は、「PwCあらた側は東芝の16年3月期について、現時点では修正の必要はないとの認識を新日本に伝えている」と話す。事実なら、PwCあらたがこれまで実施してきた16年3月期決算を含む調査の評価になぜ時間がかかるのか、疑問も残る。

 もちろん、東芝の主張もうのみにはできない。「東芝の綱川智社長は、S&Wの買収時に原発建設費用がオーバーしかねないことは理解していたが、コスト削減で補えると考えていたことを認めている。やはり、その見積もりが甘かった可能性はある」(重電業界アナリストの和泉美治氏)からだ。

 東芝問題を巡る次の焦点が17年3月期決算であることは言うまでもない。だが、このままでは膨大な数の株主に甚大な影響を与える上場廃止も視野に入る。PwCあらたは、今後の方針について説明する必要があるのではないか。

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