「意見不表明」自体が極めて異例

 東芝の16年4~12月期決算の確定作業が混迷した最大の理由は、同社の米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の内部統制と決算を巡り、同社と監査法人のPwCあらたの見解が対立したためだ。

 PwCあらたは3項目について疑念を持っているとされる。

 ①WHの経営陣が米原発事業で発生した巨額損失を抑えようと、従業員に「不適切なプレッシャー」を加えたことが発覚した。過去の内部統制にも疑義がある。

 ②東芝の16年3月期、17年4~9月期決算の適切さに懸念がある。

 ③WHは15年12月末、米エンジニアリング大手のシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)から、原発工事会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を買収した。その買収に伴う損失は後にWHに巨額の減損損失をもたらしたが、東芝経営陣の損失認識が遅すぎた可能性がある。買収時期の前後に認識できたのではないか。

 といったものだ。まず会計監査の原則論から言えば、こうした疑念があるにせよ、「監査を終えるために必要な資料を会社側に求めても出てこないといった、決算が適正かどうかの判断を出来ないようにする理由がなければ監査意見不表明にはしない」(ある大手監査法人の会計士)と言われる。

 「意見不表明」自体が極めて異例な出来事だというのである。

 前出の監査法人幹部は、「(S&Wの買収を含めて)東芝の16年3月期決算に疑義があるとすれば、自らの調査結果をもってPwCあらたは当時の担当監査法人(新日本監査法人)と協議し、その監査法人に修正をしてもらう。それから17年3月期決算の監査に入るのがスジ」と指摘する。

 その作業をしないと、16年3月期決算の修正からPwCあらた側で手を付けなければならない。さらに、その監査の前提となる同期の期首(15年4月)時点の会計数値も信任出来るかどうか不明となるなど、難しい問題が積み上がることになると言われる。

 さらに、S&Wを売却したCB&IやM&Aに関わったファイナンシャルアドバイザーなど、さらに多数の関係者への追加インタビューも必要になるかもしれない。事実上、収拾がつかない状態になるのである。