HSBC、デモシストの寄付口座開設を拒否

 今回の新党設立にも圧力が加えられたと見られるふしがある。デモシストは寄付を募るために大手銀行のHSBC(香港上海銀行)で口座開設を試みた。だが、HSBCは先月、同党に開設拒否を通告した。

 HSBCはその理由について、「行政手続きと商業上の理由」としたうえで、「詳細については顧客の個人情報のためコメントできない」と回答している。

 HSBCで口座を開けなかったため、デモシストの共同創設者で副事務局長を務める周庭(アグネス・チョウ)氏は、恒生銀行に寄付金用の個人口座を作った。だが、開設から間もない4月11日、同行から口座の使用を制限すると通告されたことを自身のフェイスブックで明らかにした。事実上の口座凍結だという。

 一連の拒否と制限について黄之鋒氏は「政治的な力が加わっている」と非難している。デモシストを支持する層から金融機関に対して批判の声が高まっている。

分裂する民主派、過激派が暴動も

 銅鑼灣書店の事件や、映画「十年」のヒットをきっかけにして、民主化への機運が再び高まりつつある。

 だが、民主派が一枚岩なのかといえば、そうではない。民主派は、自由が許されるこれまでの香港を維持していきたい現状維持派が中心だが、独立志向の「本土派」と呼ばれるグループも存在する。本土派は時に、暴力に訴えることも辞さないなど行動が過激だ。

 旧正月を迎えた今年の2月8日の深夜、繁華街の旺角(モンコック)で暴動が発生した。100人以上の負傷者が出て、暴動に加わった54人が逮捕された。発端は、食物環境衛生署が、無許可で営業する屋台を取り締まったこと。これに、本土派を中心とする人々が反発した。警官が空に向けて威嚇射撃をするだけでなく、暴動に参加した人々に銃口を向ける様子がメディアで何度も報じられた。

 暴力行為をいとわない本土派の姿勢には、香港の中でも批判が多い。

 世界中が注目した雨傘革命についても、香港の中心街の道路を2カ月超にわたって占拠した学生らの行動に賛同しない香港人は少なくない。生活だけでなく、経済活動にも支障が出たからだ。

 デモシストはこうした反省からも、暴力に頼らずに自らの主張を広げていく腹積もりだ。デモシストの羅冠聰党首は設立の記者会見で「独立志向の(本土派の)党とは意見が異なる」と本土派との違いを強調したうえで、民主自決を目指すことを訴えている。

 再び高まりつつある民主化の機運を、デモシストは影響力拡大に結び付けることができるだろうか。

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