危惧されるリビアの「シリア化」

 フランス、そしてベルギーでのISのテロは、国際社会の危機意識を高め、対抗措置の強化が行われている。では、いずれISの脅威はなくなるのだろうか。

 この問題に自信を持って答えられる専門家はいないだろう。しかし、昨今メディアでも取り上げられているとおり、ISは米軍主導の有志連合による空爆、ロシアやイランの支援を受けたシリア軍(アサド政権)による地上戦強化などにより、支配領域が縮小化しており、また離反者が多く出るなど組織的に弱体化傾向にある。

 一方、今日ではISのグループが、パキスタンからナイジェリアなど広範囲に渡って台頭している。特にリビアの地中海沿岸の都市シルト(Sirt)は、ISのグループが事実上コントロール下に置いており、今後はリビアが第二のシリアにならないかが懸念されている。一部では既に戦闘員が5000人(現地のリビア人以外では、特にチュニジア人が多いとみられる)に達しているとの情報もあり、さらにISのメディアでも「シリア・イラクに来るのではなく、リビアを目指せ」とする声明も流れている。

ISの「ブランド価値」をどう“毀損”させるか

 今のような状況が続けば、おそらくISはシリアとイラクにおいて、さらに支配領域を失い、軍事的に、財政的に、組織的に弱体化するだろう。しかし我々が理解しておくべきは、ISというのはもともと明確な支配領域を持たないグループであり、領土を持つ国家のように、支配領域を失い、また組織的に破壊されたからといってその脅威は消えにくいということだ。

 もともと「見えにくい脅威」という非国家主体であるISは、シリアやイラクにおいて国家のコントロールが及ばない権力の空白地帯を自らで埋めることで“領域支配”を実現し、さらに行政機構の設立や課税制度の導入などにより如何にも国家のような振る舞いを行ってきた。国家のような振る舞いをする非国家主体としてのISが弱体化したとしても、引き続き「見えにくい脅威」として国際社会の前に存在することとなるだろう。

 ISもアルカイダも、国家以上に適応性と柔軟性に富んだ脅威だ。一旦弱体化しても、次にまた国家の権力が脆弱なところを探し、潜り込んでいくだろう。実際に、世界各地でISの支部を名乗る組織が台頭しており、拡散化現象が始まっている。

 ISは“グローバル化のリスクが作り出した産物”と表現することもできる。組織としてのIS以上に、サイバー空間に存在するブランド、イデオロギーとしてのISをどう叩くかが大きな課題だ。国際社会の新しい対応が求められる。