社内からアイデアが生まれるプロセスを用意

 キックボックスでの調査の結果、この作業というのが膨大であることが分かりました。競争力のあるサービスを作るには、2000万とか4000万のデータが必要で、それぞれのデータに何十というキーワード設定が必要だというのです。つまり、コンテンツデータの量以上に重要なのは、そこにどんな検索キーワードを設定するか、ということだったのです。

 それは、人がどんなキーワードで検索した時に、どんな画像を結果として出すべきかを検証しなければならないということです。これはある種、人の考えや行動を学ぶことに近い。その作業をゼロから立ちあげようとすると相当のコストがかかります。そうした調査から、フォトストックサービスは、自らやるよりは、買収した方がコストやスピードの面でメリットがある、という判断に結びつきました。

 新規開発については、「市場に聞くな」というセオリーもあるかと思いますが、キックボックスでは「市場に聞け」のアプローチをしています。前者のアプローチについてはどう思いますか。

ランドール氏:アドビの中でキックボックス1つが新規開発を担っているということではありません。おっしゃるように、いわゆる「市場に聞かない」方法も持ち合わせています。つまり、人々の頭にないような驚きのある発明のような類いですね。

 アドビでも、リサーチラボで博士号を持ったような人材が大学などと協力して、技術的なブレイクスルーを探し出したり、製品チームでも同じような新規開発が行われたりしています。

 大切なのは、社内のどこからでもアイデアが生まれるプロセスを用意しておくことです。アドビで言えば、キックボックスのような起業家のようなアプローチ。ラボのようなカッティングエッジな技術チームによる新規開発。もう一つが製品開発チーム。もちろん、経営陣でもアイデアは日々検討されています。

 アイデアは、そこかしこで生まれます。一方、アイデアがあっても、それを見つけ出す道筋がなければ、そのアイデアはないも同然です。それをなくす一つの方法がキックボックスというわけです。

 (米アップルの創業者の)スティーブ・ジョブズのような、今世の中に存在しないものを1人のビジョナリーのインプットから成り立たせるのは、一部のタイプの製品に限られると思っています。一部のシニアマネージメントから生まれるアイデアだけではなく、アイデアを受け入れる「入力装置」をたくさん用意しておくということを私たちはやっているのです。