「獅子身中の虫がいる」

鈴木会長:これがあらすじでございますが、(伊藤名誉会長は)つい2~3日前まで、私にも「よろしく頼むよ」と電話をもらっていました。お恥ずかしくて申し上げられないけれど、獅子身中の虫がおりまして、色々なことを外部に漏らしていたのは事実です。そういうこともあって今日は、顧問の佐藤(信武氏)と後藤(光男氏)に来てもらいました。2人は古くから伊藤名誉会長と密接な関係がありまして、毎週1~2時間は話をしている間柄です。その2人が本当にびっくりしているので、実態を話してもらいたいと思います。

 顧問の佐藤氏、後藤氏は、確かに古くからセブン&アイと深い関係があり、鈴木会長や伊藤名誉会長とも親しい間柄だ。しかし、鈴木会長から紹介されて最初にマイクを握った後藤顧問の語った話は、日本を代表する企業の実態とは思えないようなお粗末な中身だった。「伊藤名誉会長と鈴木会長のお部屋を行ったり来たりする役割」「井阪社長のお父様と昵懇の仲」など、理よりも情実や縁故が物を言うような、極めて属人的に経営の意思決定がなされてきた様子が浮かび上がった。

「私は井阪社長のお父様と昵懇」

後藤顧問:(セブン&アイの)顧問として10年以上、伊藤名誉会長のお部屋と鈴木会長のお部屋を行ったり来たりする役柄で、大変フランクに話をしてきました。そんな中で先ほど話がありました、井阪社長の件が出てきたのです。

 私は井阪社長のお父様と昵懇で、井阪社長親子とは長いお付き合いです。2月15日、鈴木会長からの内示を受けて(井阪社長が)一旦は分かりましたと帰った後、鈴木さんに「あれは受けられない」という話があった、という直後に私は出社しました。話を聞いて、井阪社長にも会い、突っ込んだ話をしました。

 普段はマイルドな男が、日頃の様子からは考えられない大変な剣幕で(鈴木会長の部屋に)来たということを知って、年齢から言っても、ホールディングスの会長と(傘下にある事業会社)セブンイレブン社長という間からしても、(問題があるので、私から)井阪社長に話して、鈴木会長のところに一緒に行くことを考えました。鈴木さんに、「だから、(井阪社長を)許してくれ」と伝えると、鈴木さんは「うん」と言ってくれました。

井阪社長の退任巡り、実父を訪ねた顧問

 そこで17日に井阪さんの部屋に行ったのです。話をすると(井阪社長は)「22日に、自分の頭を整理して返事をする」と言いました。その翌日、私はちょこっと気がかりなものですから、井阪くんのお父様のところに連絡をして、自宅を訪問しました。

 鈴木会長は「(セブンイレブンの)社長の退任について井阪くんに話をしたら、井阪くんのお父さんはどう思うだろう」と言っていました。(井阪社長の父親の)井阪さんは野村證券を作ってこられた大先輩で、私も憧れた人です。ですから「野村スピリットで返答されるでしょう。『息子を7年間に渡って社長に就けてくれてありがとう』と言われると思いますよ」と鈴木会長には伝えました。

 実際、井阪くんのお父さんは、「私が言うべきことを、一言一句、鈴木会長に言ってくれてありがとう」とおっしゃってくれて、マンションの4階から1階まで、私を送ってくれました。「7年間ありがとう。落ち着いたら鈴木さんのところにお礼にうかがうから、タイミイングを教えてね」というのが、井阪くんのお父さんと会った最後です。私は「事を穏便に済ませたいと思っています」と伝えて帰りました。

 なぜ私がそう言ったかというと19日の夕方、私のところに井阪くんのお父さんから問い合わせがあったんです。「息子は会社でまずいことをしたんですか」と。私は「それはありません」と即答しました。また(会った時には)「自分が鈴木さんを訪問したら(退任させるかどうかという判断に)変化はあるか」とも聞かれました。「それは経営決定ですから、ありません。本件でお父様は動かないでください」と言って、お別れをして帰りました。

井阪社長とのやり取りを残しておいたと明かす顧問

後藤顧問:その後、(井阪社長の)お父様とは会っていません。けれども19日の夜中23時半に、井阪くんが僕の自宅に電話をくれました。大変けんか腰の電話でしたから驚きました。今にして思えば、「お前酔ってるんじゃないよな」とひと言言えばよかったと思います。

 私は井阪くんより年上で大変かわいがってきましたが、そういう人物に対する口調ではなかったので、私は(電話のやり取りを)残しておきました。「父親のところに行ったら困ります」と(井阪社長は)言っていました。私は、自分がお父様に会いに行ったのは、物事を穏便に済ませたいからであって、争い事の原因を作るつもりは全くないと、非常に強く説明しました。すると彼も落ち着いたのです。

 「自分ももう60歳間近で、自分のことは自分で決めます。父親は既にもうろくしております」「ただし、父のことを高く評価してもらっているのは、父も私も感謝しております」というのが井阪くんの言葉でした。

 そして「(退任の内示を受けるかどうかの)返事は22日にすると言ったけれど、24日にしてほしい」「その間に相談したい人がいる」と井阪くんは言いました。「伊藤名誉会長にも相談したいと思っています」「自分は会社経営について父親に相談したことはありません、鈴木会長に100%相談してきました。それは後藤さんもご存知でしょう」とも言われました。そして、「これからは父に電話するのをやめてください」と言われましたから、私はしないと約束したのです。

 私は、伊藤さんの部屋と鈴木さんの部屋を行ったり来たりしているので、伊藤さんとも井阪くんの問題を話しました。「それについては触らないでください」と伊藤さんに言い、伊藤さんも「うん」と言いました。伊藤さんは最後に、「私は経営は全て鈴木に任せている。従って井阪くんには、私が何か言うんじゃなくて、自分で鈴木のところに言いに行きなさい」と言ってくれました。私はそれでほっとして帰ってきました。けれどこの時、私は恐い事が起きると嫌だな、と思っていました。

 井阪社長の退任について、伊藤名誉会長から内諾を引き出した後藤顧問。だが嫌な予感を抱いたのかもしれない。同じく顧問の佐藤氏にも協力を仰ぐ。

後藤顧問:鈴木さんは感情で物を言う人ではありません。一定の裏付けで物を言う人ですから、そんな彼が辞めるというと会社が困ります。そこで、ここにおられる佐藤顧問にも、鈴木さんのところに行ってきてください、とお願いをしました。

 鈴木さんも同じことを言うと思いますが、伊藤名誉会長は鈴木会長に経営を全部任せてきました。さらに伊藤さんは、鈴木さんに電話をして「経営は全部君に任せるから」とも言っています。それで一段落したと思ったのに…。佐藤顧問に伊藤さんとのやりとりを話してもらいます。

次ページ 詰めの段階で伊藤名誉会長が翻意?