「井阪・セブンイレブン社長は食ってかかってきた」
話が長くなりましたが端折って申し上げると、私の話を聞いた人たちが、それぞれ手分けをして(セブンイレブンの経営を)やってきたんです。残念ながら、(井阪社長から)COOとしての改革案はほとんど出てきませんでした。
(井阪氏が社長になって以降、セブンイレブンは)業績がずっと好調で来たのにということもあって、(退任させるのを)どうかなという気持ちもありました。けれど新しい案が(井阪社長から)出てきませんということを、幹部たちが口をそろえて言っている。
私自身、今までのように、自分で考えたことをこの先何年も実行できるわけではありません。後継を育てることが必要だと常々感じていました。何人かの幹部に聞いても、(井阪社長の退任については)7年も続けてきたのだから十分じゃないかという話になりました。そこで私は彼に内示を与えたわけです。
ただ内示を与えたところ、非常に恥ずかしいことですけれども、(井阪社長は)全部自分がやってきたというような言い方をして、食ってかかってきました。「私はまだマンションの支払いも続けております。私はまだ若い。私はセブンイレブン一筋で学卒からやってきたのだから、今やめるわけにはいかない」と。私は「それは違うんじゃないの」と言いましたけれど、けんか腰なんです。見たことのないような姿で、それ以上議論をしても仕方がないから、私は彼を帰しました。
それが私との、「やめる、やめない」ということに対する答えです。その後、私と接触しても、(井阪社長は)「こないだはすみませんでした」という言葉もないし、けろりとして以前と同じように会話をしておりました。私も色々言う必要もないと思って会話を続けてきました。この後のことは、ホールディングス社長の村田くんが説明します。
井阪社長に対する不満や、退任を勧めた後の井阪社長の反応などを話した後、鈴木会長は村田社長に説明を補強するよう促した。村田社長の口から出てきたのは、セブン&アイの大株主であり、イトーヨーカ堂の創業者でもある伊藤名誉会長の“翻意”だった。

村田社長:今のプロセスについては、私も立ち会っておりましたので、詳細を言いますと、(鈴木会長から内示を受けた直後、井阪社長は)私の部屋に来て、「元々自分は鈴木会長から(セブンイレブンの)社長を任命された。その会長から退任と言われたので、分かりました」と言って帰って行きました。非常に落ち着いた態度でした。
けれどその後、会長が言われたように、翌々日に(井阪社長)本人が会長室に行って激怒した言い方をされたそうです。その時点でそれについては知りませんでしたが、その後、(鈴木会長と)井阪氏を含めて3人で話をしました。
井阪氏は大変興奮しておりました。「自分がなぜ退任しなくてはならないのか」「今まで仕事は一人でやってきた」ということを言われておったので、ここはもう一度私の部屋に来て、落ち着いて話をしましょうと申し上げました。大変興奮して部屋を出ていこうとしていたのを、強引に私の部屋に入れたんです。けれど興奮状態が続き、結局は私の話を聞かずに帰りました。
その後、会長からあったように、約1カ月強に渡って接触できない状態が続きました。本人がどういう思いかは、知るよしもありませんでした。
伊藤名誉会長から「はっきり断られた」
村田社長:ご存知のように、(セブン&アイでは)今期から指名・報酬委員会の会議をもって、特に人事については検討するということになっていました。その席で今回の(社長の)変更について提案を致しました。(指名・報酬委員会を構成する)4人は、伊藤邦雄社外取締役(企業統治に詳しい一橋大学大学院特任教授)と米村敏朗社外取締役(元警視総監)、そして私ども2人(鈴木会長と村田社長)です。
議論では非常に重要なことがありました。(米投資会社の)サード・ポイントの問題もありますが、特に重要なのは、創業者である程度株を持っている伊藤家の判断でした。(伊藤家の判断に)引っ張られることはないけれど、その点が非常に重要なんだと(指名・報酬委員会で)言われました。そこで私は伊藤名誉会長にこの案件について承諾をもらいに行ったわけです。
実はそれ以前、伊藤名誉会長からは私に「事前に人事案を教えてくれよ」と話がありました。それもあって名誉会長のところへ行き、「今回はこういう議案を指名・報酬委員会に出しますから、名誉会長も後押しをお願いします」と言いました。
以前から伊藤名誉会長からは、経営については鈴木会長に任せていると聞かされていましたし、今回の人事についても名誉会長から承諾をいただいて、指名・報酬委員会で私が、「名誉会長もこういう意見でした」と申し上げようと思ったわけです。
けれど、名誉会長からはっきりと断られました。
こうしたことは初めてで、驚きました。今まで鈴木会長の経営に信頼感を持っていたのに、なぜこの件に関して承諾していただけないのか。私も名誉会長とのお付き合いは長いので、なぜなのかという違和感をものすごく持っています。それは今でも持っています。
以上が、指名・報酬委員会までの話でございます。
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