クリエイティブソフトウエア世界最大手の米アドビシステムズが好調だ。日本時間2016年3月18日に発表した2016年第1四半期の業績は、13億8000万ドルで過去最高。2015年度は48億ドルの過去最高の売り上げを達成している。
現在アドビを率いるシャンタヌ・ナラヤンCEO(最高経営責任者)は2007年に就任以来、ウェブサイト分析サービスを提供する大手米オムニチュアの買収、パッケージ版ソフトの完全撤退など、次々と新機軸を打ち立てた。
アドビは1982年創業以来、ポストスクリプトというページ記述言語を使ったドキュメントフォーマット「PDF」を業界標準に押し上げ、その後クリエイティブソフトで世界最大手に上り詰めた。画像加工ソフトの「Photoshop(フォトショップ)」をはじめ、グラフィックソフトの「Illustrator(イラストレーター)」やDTP編集ソフトの「InDesign(インデザイン)」といったツールは、今やクリエイターにとって欠かせない存在となっている。
パッケージソフトからクラウドへ「完全」切り替え
そのアドビが2013年に発表したパッケージソフトの販売中止は業界を驚かせた。10万円以上するパッケージ版ソフトを売りきりで提供していたビジネスモデルを、月額980円からの課金制のクラウド版「Adobe Creative Cloud(アドビクリエイティブクラウド)」に完全に切り替えると発表したのだ。
出版業界やソフトウエア業界が紙やパッケージ版はそのままに、電子版やクラウドでの月額モデルを提供するのは珍しいことではない。一方、アドビは、併存期間をほとんど設けずに、一気にパッケージ版の出荷停止に踏み切った。
さらに、2009年の米オムニチュア買収以降、ウェブマーケティング企業としても名乗りを挙げ、次々とM&Aを遂行し、古参企業を猛追する。
パッケージソフトの販売停止を決めた当初を振り返り、同社のシャンタヌ・ナラヤン氏は成功の秘訣を次のように語る。

「現状を維持するのが有効だという人もいますが、それは自分自身を騙していると思います。テクノロジーのビジネスは、破壊者になるか、逆に破壊されるか、どちらかしかない。私たちにとって、変化しない方がリスクは大きかったのです」
「すべてのCEOには、ビジョンや決心があるはずです。決めたなら、それに疑いをもってはいけない。そして何より重要なのは、戦略があっても実行が伴わなければ意味がないということ。変化しようと考えたなら、1日も早く変わるべきです」
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