「サンフランシスコやシリコンバレーに、“ブラック企業”はほぼ存在しない。それだけ、従業員をケアする、従業員に満足してもらうことが重要視されている。どんな企業でも、従業員のやる気を引き出し、その貢献度をきちんと認識し、それが守られているかどうか、常に職場文化の健全度を測定できていなければならない。我々には、これらを可能にする手段とミッションがあるということを前面に打ち出していく」

米国の福利厚生サービス最大手、Anyperk(エニーパーク)の創業者兼CEO(最高経営責任者)である福山太郎氏は、新たな船出に際して、こう語った。同社は5日、Fond(フォンド)へ社名変更。従業員が職場に満足しているかどうか、職場文化が健全かどうかを定量的に測定できる新サービス「Engagement(エンゲージメント)IQ」も開始した。
福山氏はシリコンバレーで最も名の知られる日本人の起業家だ。
2012年、日本のベネフィット・ワンなどをヒントに、福利厚生のアウトソーシングサービスを提供するエニーパークをサンフランシスコで創業。契約企業の従業員は、毎月の携帯電話やケーブルテレビの料金、映画館での鑑賞、ショッピングセンターでの買い物などで15~30%程度の割引を受けられる。今ではTモバイルUSやセールスフォースなど米国を中心に1000以上の顧客企業を抱え、同分野ではトップシェアを誇る。
しかし、福利厚生サービスだけで福山氏の思いが実現するわけではない。「やりたいことは、健全な職場文化を築くための包括的なサポート。昨年に『Rewards(リワーズ)』というサービスを開始したが、すごい勢いで伸びている」と福山氏は話す。
上司や同僚がポイントで「ありがとう!」

リワーズは、従業員に対して、上司や同僚が、都度“ご褒美”やプレゼントをあげることができるサービス。目標を達成したり、誕生日などを迎えた従業員に、オンラインで「ポイント」を贈ることができ、従業員は貯まったポイントをスカイダイビングなどの体験や様々な物品に交換できる。企業ごとにカスタマイズが可能で、例えば、その会社のロゴ入りTシャツや、有給休暇などの賞品を用意する企業もあるという。
「日本では上司が『飲み会』を開催して慰労することが多いが、シリコンバレーでは慰労や褒賞の多くがギフトカードでなされている」と福山氏。「例えば、人事担当がスターバックスでギフトカードを大量購入し、マネジャーが部下に配るといった例が多い。そうした社内でのギフトカードのやり取りは米国で4兆6000億円の市場があると言われている。そのほとんどがオフラインでのやり取りだが、これをオンライン化しようという試みがリワーズ」と説明する。
ギフトカードそのものではなく、ポイントを小分けで贈ることができるため、例えば、夜遅くまで頑張っていた従業員がいたら、ポイント付与権がある上司や同僚が「昨日、遅くまでお疲れ様。ありがとう!」と、気軽に感謝の意を示すことも可能。昨年5月に開始して以降、リワーズの導入企業は100社を超えた。
「どれだけ従業員の承認欲求を満たすか、がリワーズのコンセプト。ある研究では、会社に認めてもらっていると感じ、自らの職場を気に入っている従業員が多い企業は、正しく評価されていないと感じる従業員が多い企業よりも業績や顧客満足度が高いと示されている」
「頑張った従業員に、ちゃんと『ありがとう』『頑張ったね』と認めてあげることは、従業員の定着にも非常に重要な要素。インスタグラムなどのSNS(交流サイト)で常に『いいね』と評価し合っている若い世代ほど、社内でも、ちょっとしたことへの承認を求める傾向にある」
そう話す福山氏は、次いで今回、3つ目のサービスを投入することで、さらに職場文化の健全化に寄与しようとしている。それが、エンゲージメントIQだ。
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