「会社の存続さえ危うい」
新しい取締役会が下した決断はさらに波紋を呼んだ。株主総会後に開かれた取締役会で、当時社長だった穐田氏を解任。2月に入社したコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の岩田林平氏を社長に据えることを決めたのだ。

従来の執行役メンバーは、総会後の取締役会で佐野氏、岩田氏、穐田氏を除きすべて解任された。創業にかかわった小竹貴子氏が再度入社する予定であるなど、徐々に幹部メンバーは決まってきているとされるが、会員事業、管理部門など、重要なポジションのトップはほとんどが空席のままだ。
社内に対しても、未だに明確な経営方針は示されず、「足下のプロジェクトをこのまま進めるべきかどうするのか、といった現場レベルでの判断が難しくなってきている」(ある社員)といった実務面での影響を不安視する声も聞かれる。
そうした状況を鑑み、ついに社員が動いたというわけだ。
労働組合は、今週中に開催予定の取締役会に、佐野氏と岩田氏の退陣を要求する嘆願書と署名を提出する予定だ。結果によっては、穐田氏以下、前体制を支持する社員が一気に辞職をする可能性も出てきている。ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストは、「もはや、中長期的にみたサービスの提供や会社の存続さえ危ういといっていい。さらに、社員が一丸となって否定するような執行役メンバーを選んだ社外取締役の“甘さ”も責任追及されるべきだ」と話す。
クックパッドの株価は、株主総会後、17%安の1770円まで急落した。東証1部上場企業の値下がり率で首位となった。その後も株価は下落を続け、4月5日の終値では1500円を切るところまで落ち込んでいる。
労働組合は法律上、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」と規定されており、経営権を持っているわけではない。労働組合が佐野氏に対して退陣を要求したとしても、それを岩田氏や佐野氏が無視することは容易だろう。さらに言えば、社員の多くが辞めたとしても、クックパッドの最大の資産である会員組織は会社の資産として残る。
半年に及ぶ“クックパッド騒動”は、ついに社員も巻き込んだ“大騒動”の様相を呈してきた。
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