4月1日付けで、カルロス・ゴーン会長に代わり日産自動車の社長兼CEO(最高経営責任者)となった西川廣人氏が、就任後初の記者会見に応じた。稀代のカリスマ経営者の後継者として意気込みを語った。
ゴーンさんからはどのように社長交代を告げられたのか。
西川廣人CEO(以下、西川):三菱自動車が3社目の(ルノー・日産アライアンスの)パートナーとして加わったのは大きな出来事だった。どういう体制が一番いいかと考えたときに、ゴーンさんの役割を整理しないといけないと、私とゴーンさんで議論した。昨年三菱自動車への出資を終えて日産、三菱自の体制を考えたとき、そこから(交代の構想は)始まっていた。
これまでゴーン会長と二人三脚で歩んできたが、社長に就任してどのような経営方針を考えているのか。
西川:突然ゴーンさんが日産を退いて私に代わった、ということではない。経営の継続性がある中で役割が変わったということだ。ゴーンさんは三菱自が加わったアライアンスの運営に軸足を置く。一方、日産のパフォーマンス、経営体制はしっかりしてきている。このことが社長交代の理由だ。
私の1番のミッションはスローダウンさせずに、日産を着実に進化、成長させること。加えて、変化の激しい時代をチャンスとして捉えることを意識している。「技術の日産」というDNAの上に、(日産が自動運転や電動化のリーダーを目指すビジョン)「インテリジェント・モビリティ」という新しい技術をのせて、商品、サービスとして提供することだ。日産の新しい顔作りの大きなチャンスだ。
「アライアンスはもっと大きくなる」
西川:また、アライアンスの起源がルノーによる日産への資本出資だったため、今まで日産の立ち位置は受け身に見えていたと思う。あれから17年、私がCEOを引き継いだ。これからアライアンスはもっと大きくなる。4社目、5社目のパートナーも出てくるだろう。その中でアライアンスの成長を引っ張る存在に日産をしていきたい。今まではゴーンさんの牽引力で進んできたが、もっと強い自覚を持って日産の実力を上げていく。
「技術の日産」に上乗せしていくという「インテリジェント・モビリティ」。具体的にどのような形で実現していくのか。
西川:電動化や、知能化、コネクテッドという技術革新により、クルマという商品の提供だけでなく、新たな移動サービスが実現する。時間という価値や、マイレージを消費者に届けるようなサービスだ。純粋な技術だけではなく、技術の上にのせるビジネスの在り方、届け方を考え、サービスでも革新的でありたい。数年後には皆さんにも納得頂ける形で実現できる。
残された宿題は小型車
知名度や発信力で、ゴーン会長に劣るのではないか。
西川:どうしようもないですね(笑)。あんなにカリスマ性がある経営者はそういない。個人的な技量は及ばないにしても、「インテリジェント・モビリティ」の発信など将来に向けて引き継いだ仕事を進めていかなければいけない。
(2011〜16年度の中期経営計計画)「日産パワー88」でやり残したことは、たくさんある。マーケットシェアは8%に及んでいない。インド、インドネシア、ブラジルなど新興国への先行投資も十分に回転していない。宿題が残っている。私がかなりのスピードでこなしていかなければいけない。LCV(小型商用車)のビジネスや、セグメントでいえば小型車のクラスも宿題。収益性を将来も担保していくため、小型車を含めどのマーケットでも稼げるようにする。
インドネシアの現地法人の社長を三菱自から招聘した。今後の三菱自との連携の方向性は?
西川:これまでも説明してきたように、十分双方にシナジー効果がある。日産のCEOとしては、日産が得をするように三菱自から貪欲にもらえるものをもらいたい。その1つが人材。特にアジアに関して豊富な人材プールが三菱自にはある。もちろん全部取ってしまうわけにはいかないが、許される範囲では積極的にお願いしたい。インドネシア以外についてもこれから検討する。
日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)の業況判断指数も改善している。現在の経済環境をどう評価しているか。
西川:経済指標が示している状況は、誰がどう見ても堅調だ。新聞などで「イエスバット」と不安をあおる書き方もあるが、米国も中国も全体で見れば堅調だ。欧州の市場も想定以上に回復してきている。人手不足も、不安というよりは経済の好循環が始まったということだ。英国のEU離脱や米国の政権交代、欧州の首長選挙など不透明な事態はあるが、不確実性が以前にもにまして我々の経営に影を落としているかというかとそんなことはない。
ルノーでは排ガス不正疑惑も持ち上がっている。
西川:あくまでルノーの話で私が発言する立場にはないが、不正はないと思っている。実燃費のパフォーマンスが(カタログ燃費と比べて)悪いということは、当局から指摘を受けて改善に取り組んでいる。(独フォルクスワーゲンの不正で使われた、排ガス量を操作する)チーティングデバイスを使っていることとは別の話だ。
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