しかし、改革の勢いは長続きしなかった。経済革新3カ年計画が動き出して間もない2014年4月にセウォル号事件が起き、さらに1年後には重い肺炎を引き起こすマーズが国内に広がり、景気は停滞。実質的には改革より景気対策に追われる有様となった。

経済は停滞してきた
韓国のGDP(国内総生産)実質成長率の推移
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出所:日本総研の資料を基に本誌作成

 住宅ローンの融資規制を緩和し、2014年夏からは韓国銀行が朴前大統領の政策に沿う形で政策金利も引き下げ始めた。平行して自動車購入にかかる特別消費税の引き下げも実施。これで住宅、自動車などをはじめとした消費が拡大し、落ち込む景気を持ち上げようとした。加えて、中国に接近し、輸出で成長する元の経済モデルを追求し始めた。

 こうした施策に前後して、財閥配慮への回帰ともとれる動きが出てくる。2015年8月。会社のカネで自身の投資損失を穴埋めしたなどとして横領などで有罪判決を受け、収監されていた大手財閥、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長を特赦した。崔会長は4年の実刑判決を受け、その時点で2年半、刑に服していた。

経済の中国依存度は上がり続けてきたが…
韓国の輸出に占める中国依存度の推移
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出所:日本総研の資料を基に本誌作成

ベンチャー企業育成は十分進まなかった

 「もっと投資をして景気回復に貢献せよということだろう」。日本の植民地支配終結を祝う光復節70年を祝うための特赦の一環と説明されたが、当時、韓国ではこんな皮肉な見方も広がっていた。個人消費の刺激で落ち込みかけた景気は、ある程度支えられたが、上向かせるには、より大きな投資が必要。そう考えたのかというわけだ。偶然の一致か、財閥改革の動きもその後、目立つものはなくなった。

 一方で、ベンチャー育成は順調には進まなかった。元々、即効性のある政策などない分野だから予想はされていたものの、停滞感は募る。さらに、住宅投資の拡大などで個人の負債が膨れ上がり、その後社会問題にもなり始めた。朴前大統領にとっては、厳しい環境である。財閥改革に力を入れる余裕はこの状況の中でなくなっていったのだろう。

家計の債務が急増してきた
韓国の家計債務の可処分所得比の推移
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出所:日本総研の資料を基に本誌作成