実業家のトランプ氏は1970年代以降、トランプタワーをはじめとするマンハッタンの再開発やカジノ建設などのビッグディールをいくつも実現させてきた。その一端は、1987年に出版した『The Art of Deal』に詳しい。これは、トランプ氏のビジネスにおける鉄則や成功の裏側をつまびらかにした自伝で、彼が数々の不動産取引をいかに成功に導いてきたのかが描かれている。

“優れたディールメーカー”の本質

 トランプ氏自身、今回の指名レースで自身を偉大なるディールメーカー(取引交渉者)と位置づけ、自分であれば米国を再び偉大な国にできると喧伝している。だが、ディールという言葉を突き詰めればいかに有利な条件でビジネスを展開するかという話であり、優れたディールメーカーとは、押したり引いたり駆け引きを駆使して最も有利な条件でビジネスを進められる人間のことだ。

 今回の在日米軍の撤退についても「ディール」という切り口で捉えることができる。在日米軍は米国のアジア戦略の要であり、負担の多寡で存在意義を語るべきではないが、物事を交渉と捉えてなるべく有利な条件を引き出そうとする彼の考え方が色濃く表われているように見える。

 もう一つのゼロサムは、失ったものを取り返すという思想だ。