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4月の安倍首相訪米でどういうカードを切るべきか

 それでは安倍総理はどう対応すべきだろうか。

 こうしたトランプ流の交渉術に向き合うためには、慌てて譲歩をしては相手の思うつぼだ。最も重要なのは、自分の交渉術が通用しない相手と思わせることである。もちろん、対象国から除外されるに越したことはないが、仮に除外されなくても、日本の通商外交の失敗と捉えず、どっしりと構えることが必要だろう。

 幸い、日本から米国への鉄鋼輸出は日本の生産量の2%程度に過ぎない。しかも過半は鉄道用のレールや石油パイプライン用など、日本以外からの調達が難しいものだ。米国のユーザー企業にとって日本からの供給は死活問題であり、これらの要望を受けて、恐らく商務省は対象品目から除外してくるだろう。直接的な実害が大きくなるとは考えにくい。

 また、日本の鉄鋼業界はかつて米国との激しい鉄鋼摩擦を経験してきており、こうした問題には国益を考えて冷静に対応する「大人の業界」だ。日本政府も当面の利害のための安易な譲歩は必要ない。

 まずは、日本を除外しないことが米国にとってマイナスになるということを理解させることだ。もし、日本を除外せず日米が対立すれば、それを最も喜ぶのは、鉄鋼問題で本来のターゲットである中国である。日中が一緒になって米国を世界貿易機関(WTO)に提訴するという事態は米国議会も望まない。

 ただし、日本を適用除外にさせたうえで、同時にトランプ氏にどのような花の持たせ方をするかを考えなければいけない。つまり、トランプ氏が国内に対して、何らかの「成果」をアピールできるようにする必要がある。

 それは、決して譲歩することではない。対米貿易黒字の削減はおよそコミットできる性格のものではないし、すべきではないのは当然だ。

 ならば、米国が日本に圧力をかけてくるであろう、「日米FTA交渉の開始」というカードは、どうだろうか。