警察と検察の間で暗黙の了解

 この流れに間違いはない。けれど、「重大事件や大物が絡む案件となると、だいぶ様相が変わってくる」というのが、警視庁関係者の話だった。

 実のところはどうなのか。東京地方検察庁などでの勤務を経て、現在は弁護士を務める元検察官から詳しい事情を聴くことができた。東京地検時代は、警視庁の捜査一課(殺人、強盗、暴行、傷害などの凶悪犯罪を担当)案件や、薬物事犯を数多く担当していたキャリアの持ち主だ。

* * *

警視庁関係者から、今回の清原事件のように有名人が関わる事件になると、警察は検察の許可なしに逮捕に踏み切れないといったことを聞いた。

元検察官:その通り。凶悪事件や大物・有名人が絡む事件は、マスコミで大々的に報じられ、世間に与える影響も大きいので、取り調べ機関としては失敗できない事件ということになる。そういう事件に関しては、警察官から、あらかじめ着手、着手というのは逮捕やガサ(捜索・差し押さえ)のことだが、その前に、検事にそれまでの事情・状況などを説明して、了解をもらいに来るようになっている。

そういう決まりなりルールがあるのか。

元検察官:いや、暗黙の了解というところ。警察官から報告を受けた検事が「では、着手していい」と言わない限り、警察の方で裁判所に逮捕状の請求も勝手にしたらダメ、ということになっている。

どのような状態ならOKとのゴーサインを出すのか。

元検察官:検事としてはきちんと起訴して有罪にできるのかどうか、失敗しないためにはどういう証拠がいるのか、その証拠はどうやったら集められるのかということを考えて、警察官に対し、「不足しているこういう証拠を集めてほしい」と伝え、それがそろったらゴーサインを出す。

 清原・元選手の場合で言えば、現場に踏み込んだら、確実に身柄が取れ、覚醒剤の尿反応も出る。また、覚醒剤所持の観点から、ある程度の量のブツ(覚醒剤)も持っている。そうしたことの蓋然性が極めて高い状況であったから、検事はゴーサインを出したと考えられる。

相当確度の高い情報・証拠を集めていたということになる。

元検察官:そう。薬物事犯の証拠集めでよくある手は、自宅や滞在先から出たごみの確認。ごみを押収してきて、中身を確認し、吸引に使ったパイプやアルミ箔についた燃えカス、注射使用の際に使ったコットンやティッシュなどがないかを調べる。

 ただ、それで覚醒剤を使用していることが分かっても、ごみだけであればいつ使ったのかは分からない。鑑定の結果が出る頃には、覚醒剤を使い終えて何日か経った後かもしれず、そうなると、踏み込んだとしても何も証拠がないということも十分にあり得る。