ホンダが日本一売れている軽自動車「N-BOX」シリーズをフルモデルチェンジした。先進機能の強化や軽量化で価格帯は上がり、主力小型車「フィット」に迫る水準になった。安さが売り物で、利幅が薄いとされてきた軽の収益性を高め、もうかるクルマにできるのか。

(日経ビジネス2017年9月11日号より転載)

N-BOXを発表したホンダの寺谷公良執行役員
N-BOXを発表したホンダの寺谷公良執行役員

 「上位モデルが200万円以上するなんて、軽もずいぶん高くなったな」。2017年9月1日にホンダが6年ぶりにフルモデルチェンジして発売した軽自動車の「N-BOX」シリーズ。前日の記者会見で、上位モデルの「N-BOX Custom」の4WDが約208万円になると発表されると、メディア各社の自動車担当記者はこうささやきあった。

 N-BOXは日本で一番売れている軽自動車だ。11年末に発売すると、デザイン、広い室内、走行性能などが評価されて瞬く間にヒット。「軽2強」のスズキやダイハツ工業の主力車を押しのけて、市場を席巻した。モデル末期にもかかわらず、17年1~7月の販売台数は前年同期比11%増の約12万台と軽市場で首位を独走。ホンダの国内販売における大黒柱となっている。

 そんな中でのN-BOXのフルモデルチェンジ。新型車では大胆な値付けに注目が集まった。エントリーモデルの価格は先代発表時から約15万円高い約139万円に設定。約208万円の最上位モデルの価格上昇は実に約30万円に達する。その価格帯はもはやホンダの主力小型車「フィット」に近い。

 安さが売り物だった軽自動車。新型N-BOXと競合するダイハツの「タント」やスズキの「スペーシア」の価格帯は、N-BOXよりも10万~30万円程度安い。

価格よりも価値をアピール

 ホンダの強気の価格戦略は先進機能が支える。新型N-BOXでは安全運転支援システム「Honda SENSING」を標準搭載するなど、機能面で付加価値を高めた。同システムでは自動的に衝突を予測してブレーキをかけたり、先行車両と安全な車間距離を保ちながら走行したりできる。車体も衝突安全性能を確保しつつ80kg軽量化、優れた燃費性能も実現した。