
東南アジア諸国が、ISの脅威に対して今まで以上に強い懸念を抱くようになっている。直接のきっかけは、1月にISが犯行を認めたジャカルタ連続テロ事件だ。

筆者は2月中旬に国際会議への参加のためインド・ジャイプールを訪れた。インドのムスリム人口は約1億8000万人とされ、2008年11月のムンバイ同時多発テロに代表されるように、イスラム過激派によるテロの脅威は長年インド当局を悩ます種となっている。現在のところ、インド国内でISに忠誠を誓う組織が台頭したとの報道は出ていないが、ISの各地域への浸透は、インドの安全保障にも直接的な影響を与えかねない。
インドに約1週間滞在することになった筆者が最も驚きを受けたのは、ニューデリー・インディラガンディ国際空港における厳重な警備だ。
空港警備が厳重になるのは、2001年の9.11同時多発テロ以降珍しい話ではない。しかし「1度ターミナル内へ入ると再度外へ出ることが(原則)できない」というのは筆者には初体験だった。一般的に国際線に搭乗する際には、2時間前を目途に搭乗手続きを済ませ、それから手荷物・身体の保安検査、出国審査、飛行機への搭乗となるが、たとえ空港関係者や搭乗予定者以外の人であっても、保安検査場の手前までは出入りできる。しかし今回東京への帰路で経験したのは、「空港関係者や搭乗予定者でなければそもそもターミナル内に入れない。つまり、一度入ったら、もう目的地の空港へ行くしかない」というものだった。
そういうことなので、空港ターミナルへ入るには、警備員(武装した者もいる)にパスポートとEチケットを提示する事が必須となっている。慣れない体験に戸惑ったが、日本に帰国し冷静に考えると、それは昨今の国際テロ情勢や、航空テロリズムの歴史などからも十分に理解できるものだ。
航空テロ事件の歴史
ここで、航空テロの歴史を振り返ってみよう。
旅客機が乗っ取られるテロ事件と言えばすぐ9.11同時多発テロが思い浮かぶ。確かに歴史上最悪の航空テロ事件だったが、ご存じの通り20世紀にも数々の航空テロ事件は発生している。
たとえば1994年12月のマニラ発成田行きのフィリピン航空機爆破事件(成田へ向かう最中、沖縄県の南大東島付近上空で爆発し、日本人男性1人が死亡。同機は那覇空港へ緊急着陸した。犯人はアルカイダメンバーのラムジュ・ユセフ)、1988年12月のロッカービー事件(フランクフルト発デトロイト行きのパンアメリカン航空機がスコットランド上空で爆発し、乗員乗客270人全員が死亡。事件には当時のリビア政府が関与)、1987年11月の大韓航空機爆破事件(アブダビからバンコクへ向かう最中、北朝鮮の工作員2人が仕掛けた爆弾が爆発し、乗客乗員105人全員死亡)などだ。
20世紀の航空テロの特徴を挙げるとすれば、国家・政府が関与する事件が比較的多かったことだろう。
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