「フルグラ」の増設ラインの竣工式を迎えた松本晃会長(右)と、フルグラ事業部の藤原かおり事業部長
カルビーは、2016年3月15日、宇都宮市の清原工場でグラノーラ「フルグラ」の製造ライン増設の竣工式を行った。現在、フルグラは4つのラインが稼働しているが、4月以降は2ライン増えて、合計6ラインとなる。生産能力は年間200億円(出荷額ベース)から、1.7倍の350億円規模まで伸ばす。
フルグラの売上高は、2011年度は37億円だったが、2015年度は220億円弱となる見通し。カルビーは2015年度に連結売上高2400億円、営業利益288億円を見込んでおり、フルグラは稼ぎ頭へと成長しつつある。
ここ数年で販路も拡大し、スーパーだけでなく、ドラッグストアやディカウント店「ドン・キホーテ」などでも取り扱いが増えてきた。一方で、問題になったのは品切れだ。
「昨年5月に1ライン増設したが、それでも品切れでご迷惑をおかけすることがあった。だが、これでしっかり生産できるようになる」と松本晃会長は話す。
「ザクとうふ」の相模屋食料ともコラボ
新しいラインは主に、大容量の800gのフルグラを生産する。フルグラ関連商品の売上高の6割以上を800gの商品が占めており、リピーターからの支持も高い。「他社の比較的小さめの用量でグラノーラ製品を食べるようになり、その後、カルビーの800gの大容量の製品を買うようになる人も多いようだ」とマーケティング本部フルグラ事業部の藤原かおり事業部長は話す。
一方で、カルビーは最近、「個食」に対応したマーケティングに力を入れている。
2015年9月から、九州のセブンイレブンで、「フルグラヨーグルト」を実験的に発売している。フルグラ専用に開発されたヨーグルトに、小袋入りのフルグラが付いた商品で、食べる前に混ぜ合わせる。
2016年3月11日には、相模屋食料とのコラボレーション商品「とうふで、グラノーラ。」を、大手スーパーの「マルエツ」や「マルエツプチ」で先行発売した。発売元は機動戦士ガンダムのキャラクターをモチーフにした「ザクとうふ」で知られる相模屋食料。フルグラ専用の豆腐と、50gのフルグラを付属の容器で混ぜ合わせて食べる。
3月11日から「マルエツ」や「マルエツプチ」で先行発売している「とうふで、グラノーラ。」は、50gのフルグラと豆腐がセットになった商品。専用の容器も入っているので、外出先でも手軽に食べられる
グラノーラは、一般に女性向けのイメージが強い。今後、市場を広めていくにはよりターゲットを広げていく必要がある。松本会長は「女性に続いて、今は高齢者をターゲットとして需要は増えている。その次は男性。男性に売っていくには工夫は必要で、コンビニエンスストアでヨーグルトと一緒になった商品などを出す戦略も必要だろう」と話す。
2016年4月から稼働するカルビー清原工場の増設した建屋(上)とフルグラの製造ラインの一部。原料にシロップなどを混ぜた生地をオーブンで焼き上げていく工程で、他社との違いを出すという
カルビーは、シリアル全体の売上高について、遅くとも2019年度までには500億円まで伸ばしたい考えだ。松本会長は「2019年度には、国内のシリアル市場全体で1000億円規模になるだろう。その内訳は従来のシリアルは200億で、グラノーラは800億円規模とみている。その中でフルグラは、6割に当たる480億円は取りたい」と話す。
今回の増産で宇都宮の工場の生産規模は年間の出荷額ベースで350億円になるが、敷地面積もこれ以上の増産体制は厳しい状況だ。現在、フルグラは宇都宮の清原工場のみで生産している。「とりあえず半年ぐらいは今回の設備の結果をみて考えないといけない。現時点での計画はない」と松本会長は話すが、将来は新たな工場の建設を検討する必要が生じる可能性がある。
藤原事業部長は「これまではグラノーラをまず知ってもらうことが大きな目的で、トレンドで広がってきた時代だった。だが今後はグラノーラにどんな価値があり、どんなベネフィットがあるのかを伝えて、ごはんやパンと並ぶ国民食の選択肢として上がるようにするのがミッションだと思っている」と話す。
グラノーラは、競合がひしめき合い、他社との違いを出すのが容易ではない。消費者のすそ野を広げつつ、いかに自社の商品を選んでもらうか。今後、グラノーラをより日常的な食品にしていくという課題の解決について、松本会長は「楽しみなところだ」と意欲をみせた。頭の中には、次なる手がもうあるのかもしれない。
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