囲碁においては、終局までに200手を超えることが普通だ。序盤の37手で勝敗が事実上決まるなど、あるレベル以上の人間同士ではとても考えられないことだ。仮に微妙な差がついていたとしても、19✕19の碁盤はあまりにも広く、わずかなミスで簡単に優劣がひっくり返る。

 ところが、アルファ碁は序盤で黒が優勢と明確に計算し、このまま勝利できると見て手堅く打ち始め、実際にミス無く優勢のまま押し切った。李九段のような世界トップレベルの棋士を相手に、そんなことをできる人は誰もいない。

 そのような存在に、人間は絶対に勝つことはできない。人間にとって囲碁は、ミスなしで乗り切るにはあまりに長過ぎる競技だからだ。今回のように持ち時間2時間という短時間制の対局では、なおさらだ。

 このまま行けば、李九段は一勝もできない。絶望的な確信だけが、深まっていった。

敗着は15手目

 3月12日、第3局。アルファ碁が黒(李九段)の勢力圏に踏み込んだところで、昭和の時代に見られた、やや古い形が盤面に登場した。そこでアルファ碁の好手が飛び出す。

アルファ碁が第3局で放った好手

 一見、険しい戦いになることを予感させる手でどうなることかと思ったが、数手後アルファ碁はシンプルに安全を確保する打ち方を選択した。そこで盤面を見ると、既に白がよくなっている。現在最も勢いがあり世界最強との呼び声も高い中国の柯潔(かけつ)九段はこの碁を見て、「15手目が敗着」と述べたという。

この15手目が、早くも李世ドル九段の敗着となった可能性も指摘されている

 これで3連敗。覚悟していたこととはいえ、李九段の負けが決定した。アルファ碁が人間を超えたという認識が、世界中に広がっていった。