見抜けなかった「勝ちました」宣言

 3月10日、第2局。私の楽観的な見方は、完全に覆された。

 私は第2局、第3局、第4局と「囲碁将棋チャンネル」のネット中継番組において、リアルタイムで対局を解説した。中継で見ている限り、李九段もいつもの世界戦と同様の雰囲気で、隙がない。第1局のように不覚をとることはないだろうと感じた。

 序盤の37手目、アルファ碁(黒)に「疑問手」が飛び出す。囲碁の専門用語で「カタツキ」と呼ばれる手だが、プロ棋士であればここに打つ人間はいない。私は当然、李九段が優勢になったと判断し、そう解説した。韓国のプロ棋士たちも、同様の評価だったと聞いている。

アルファ碁の放った「カタツキ」。人間の発想にはない手だった

 番組をご覧頂いた方には申し訳ないが、私の解説は間違えていたことになる。局面が進むにつれて徐々にアルファ碁の有利が鮮明になり、結局そのまま勝利したからだ。とても不思議な感覚だった。

 終局後、何度も棋譜を並べ直して考え、そして見えてきた結論がある。この手はアルファ碁(黒)による「勝ちました」、すなわちここで試合は事実上終了という宣言だったのだ。