日本政府の動きは、まずは「様子を伺う」というレベル

 今回の政府の女性取締役に関する決定は、海外機関投資家の意見の影響が大きいと考えられる。海外投資家の意見を反映することは、より多くの海外投資家を日本市場に惹きつけることや、また企業統治を国際的なスタンダードに近づけていくことで競争力をつけることと直結している。この政府主導のコーポレートガバナンス改革は、社外取締役に関しても見られてきた。2015年のコーポレートガバナンス・コード導入により、上場企業に対して社外取締役を2人以上登用することを求めた背景には、海外投資家から大企業に対する度重なる圧力がみられたこともある。女性役員に関しては昨年末、米国の議決権助言会社が「TOPIX100」の構成企業で女性役員のいない場合は、経営トップの選任議案に反対を推奨することを発表したばかりだ。

 日本での政府の動きは上場企業に1人以上の女性取締役を求めるものであり、3割から4割のクオータ制を導入した欧州の国々に比べると全く過激なものではない。2015年に社外取締役導入を要請した時のように、まずは様子を伺う姿勢が垣間見られる。政府は2020年までに女性の指導的地位に占める割合を3割とすることを以前から目標としている。中長期的に実現していくためには、根本的な女性の労働環境の整備や社外役員候補を増やすための仕組み作りが急務である。

女性取締役候補を増やすための「施策やインフラ」が不可欠

 中長期的に女性取締役候補を増やすためには、管理職レベルの女性を増やすため、女性労働における問題解決に向けた動きをより一層加速させる必要がある。内閣府の資料によると日本の出産退職は2010年から2014年の期間で女性就業人口の47%。約半数の女性が出産後に退社しているわけだ。政府や企業が連携してこの問題の解決を急ピッチで進め、産後も仕事を続けたい女性が働くことのできる環境が整わなければ、女性が管理職レベルまで仕事を続けていくことに困難が伴うこととなり、状況は改善していかないだろう。

 また、女性役員だけでなく社外役員全般について言えることだが、新しい社外役員を育てるインフラの整備が必要であろう。日本政府も今後女性取締役候補を増やすための研修制度の充実を掲げてはいるが、多くの国では既に公的認定を受けた取締役協会や大学のビジネススクールが社外役員候補向けのトレーニングを実施しており、このプロセスを経た証書の提出を任命の条件とするところもある。社外役員の役割を果たすにはコーポレートガバナンスと財務の知識や法的責任の知識はまず必須であり、さらに営利・非営利にかかわらず経営管理の知識もあることが望ましいとされているが、これらの知識を系統的に学べる機会の提供も大切であろう。

 機関投資家や政府からのプレッシャーが高まる中、今後も日本企業の女性役員の数は増えていくと予想される。しかし、それだけで社内での女性の活用が進んだり、企業業績などの好影響が出ることは期待するべきではない。その達成には他の付随する施策やインフラも必要であり、それらはまだほとんど整っていないのが現状だ。

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