「クオータ制」導入の欧州企業、女性役員比率は3~4割

 欧州における高い女性役員比率は自然に沸き起こったものではなく、政府の強い後押しにより経営側が渋々女性役員を受け入れてきた経緯がある。政府主導のトップダウンの政策の成果により、クオータ制を導入した欧州の国々の企業は、3割から4割の女性役員の登用が求められている。例えば、フランスの上場企業には、女性役員が一定割合を満たさない場合、罰金等の罰則が基本科せられるが、この政策により、2007年に10%に満たなかった女性役員の割合が、クオータ制導入後、2017年には40%以上となった。ドイツでは罰則はないものの、クオータ制の導入で3割程度の女性役員比率を達成した。

 女性役員を増やす要請は、充分な能力がない役員を任命することにつながり、最終的に企業業績に悪い影響を与えるという議論はよく出てくる。欧州でもクオータ制の導入により、企業側はこれまでの取締役会の価値観において適任とは思われない女性役員を登用することによる混乱が懸念されていた。しかし、結果として懸念していた程の混乱は発生せず、徐々に女性役員数は増加してきた。

規制から逃れるため、上場を取りやめる企業も

 一方、下記の様な現象も目立つようになったのは事実だ。例えば、女性役員比率を上げることを目的に役員会の規模を縮小する企業やクオータの規制を免れるために上場を取りやめる企業が出てきたこと。また、その国の経営環境の経験・知識に詳しいとはいえない外国人女性役員が多く登用されたことだ。このように欧州でも女性役員の大幅な増員に抵抗したり、数合わせの策をとる企業があったものの、女性役員の登用は徐々に欧州で受け入れられてきた。

 日本企業の経営者は、女性取締役を起用することによる混乱の懸念をまだ払拭できていないステージにいるといえる。ビジネスや経営経験のある女性取締役候補がすぐに急増することは無いため、今後も日本企業において専門職の女性が高い比率で社外役員になるという傾向は、しばらく続くと考えられる。

女性取締役登用の効果は明らかでないが「社会正義」

 学術的には、女性取締役登用の企業への影響について、一致した見解があるわけではない。女性役員登用により、男性だけで構成されていた取締役会の決定の過程に透明性が求められるようになるとする見方もある。一方で、新しく起用された女性社外取締役は部外者であり、発言権に乏しく、取締役会の重要な意思決定に関わることが難しいとする見方もある。そして、女性役員に期待される根本的な役割、つまり、女性の働き方や男女の賃金格差や昇進格差を改善する力になっているかという点についても、明確になっている訳ではない。実際、ドイツでは、女性の社外役員は増えたものの女性の経営幹部の数は増えていない。

 それでも女性役員を増やしていく圧力は今後ますます高まっていくと考えられる。その根本には、企業業績や意思決定への影響だけでなく、人口の半分を占める女性が取締役会でより高い割合を占めることは「社会正義」であるという考えがあるからであろう。このような価値観は欧米の機関投資家を中心に根強く、日本企業に対するエンゲージメント(対話)活動において女性役員の登用は以前から要請されていた。

次ページ 日本政府の動きは、まずは「様子を伺う」というレベル