社長の年齢が高いと、女性役員の任命は避ける傾向

 社長の年齢が高いと女性社外役員を任命する傾向は低下することも分かった。年齢の高い社長は今までの取締役会の意思決定方法に固執する傾向が高く、女性役員という未知の人材を受け入れることが難しいためかと推察される。最高経営責任者の年齢が高いほど戦略の転換を行わない傾向があることが先行研究でも指摘されており、女性役員登用に関しても変化を好まないという点で整合的な結果である。

 社外役員比率が高い企業は、他企業からビジネス経験のある女性や、専門職の女性まで、様々なバックグランドの女性役員を採用する傾向にあり、それは「スキルマトリックス」の考えに基づくと考えられる。スキルマトリックスとは、取締役会の全メンバーのスキルを詳細に分類して、それぞれが持つスキルが他の役員のスキルと補完関係を形成するように構成メンバーを選ぶアプローチで、海外のガバナンス先進企業が使っているものだ。

■女性役員の起用と企業特性の関係 (金融機関を除く日経225企業、2013~2017年)
  女性社外役員 ビジネス経験者(他企業から) 専門家(学者、弁護士、会計士など)
経営者・役員持ち株 影響なし 減る 影響なし
社長の年齢 減る 影響なし 影響なし
社外役員比率 増える 増える 増える

欧米企業も「女性取締役の増加は難しい」と主張していた

 政府は2013年から女性役員の起用を実業界に求めていた。それに対し、当時の経団連は、欧米と違い女性役員候補の数が少ないこと、また、結婚後育児に専念したいという女性も少なくないことを挙げ、どのように女性を労働市場に呼び込むかという問題を指摘していた。取締役会の多様性を求める際、候補が少ないため難しいという議論は避けて通れない。コーポレートガバナンス・コード導入以前の社外取締役(男女問わず)起用推奨の際には、日本と欧米の労働市場や雇用形態の特性の違いにより、社外取締役の候補が少ないため、内部者で構成される取締役会構成を日本企業は継続するべきという考えが主張されてきた。

 実は女性取締役候補が少ないため女性取締役を増やすことは難しいという議論は、日本企業だけでなく欧米企業も主張していた。だが、そのような企業の反発の中でも、欧州の上場企業は3割から4割の女性役員起用を実現している。

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