コンパクトシティも強み

 韓国の栄養士、キム・ミンさんが手掛ける食品販売会社、チョルスも昨年8月に福岡市でスタートアップビザを取得。12月には期限より2カ月前倒しで経営・管理ビザに切り替えた。間もなく自社製のおかゆなどの販売を始める。

 キム氏は福岡市を起業の場所に選んだ要因に「コンパクトシティ」を挙げる。空港や新幹線駅、港といった交通の要衝、県庁舎や市庁舎、そして商工会議所や地銀の本店、税務署、労働基準監督署に法務局など、あらゆる関連施設が車で30分とかからない範囲に収まっている。カフェと同じく「ワンストップ」の機能集約が外国人企業家を惹き付ける。

 自国でも事業を展開していたが「韓国は財閥企業の寡占市場で参入障壁が非常に高い。食品の信頼性が高い日本で実績をつくり、中国やシンガポールに進出する足がかりにしたい」とキム氏は語る。

 福岡市が外国人の企業支援に力を入れるのは「新たな雇用の創出に加え、地元企業の国際化を推し進めるため」(同市創業・大学連携課)。スタートアップカフェの運営にも参画している地元ベンチャーファンド、ドーガングループの渡辺麗斗氏によると「外国人が運営するベンチャーから『投資してほしい』と声がかかるケースが非常に増えてきた」。ドーガンは昨年、初めて外国人ベンチャーへの投資を決定。さらに、これまで銀行からの出資金を元手としていたが、ホームセンターのグッデイなど地場の事業会社9社からの出資を元にしたファンドを初めて組成。海外企業も含め幅広くベンチャー企業への出資を検討していくという。「国際的なオープンイノベーションの風土が地場企業にも根付いてきた結果だ」と渡辺氏は話す。

 一方で、課題を指摘する声もある。福岡市で外国人向け情報誌「フクオカナウ」を20年近く刊行し続け、同市の外国人のご意見番としても知られるニック・サーズ氏は「これまでにスタートアップビザで起業に成功している人は、従来の制度でも成功できるだけの能力のある人ばかり。制度の真価が問われるのはこれからだ」と指摘する。

 実際、ニューロケアもチョルスも、経営者は自国で起業の経験があり、資本金500万円の条件を自己資金のみでクリアするなど元々準備が整っていた。サーズ氏は「自身の経験に照らしてみても、一から起業を成功させるには1年は必要だ。猶予期間を6カ月以上にも柔軟に変更できるように制度を改良していってほしい」と注文をつける。